第42回国際心臓研究学会日本部会 Young Investigator Award 優秀賞(2025年5月受賞)

Histone serotonylation as a novel cardioprotective epigenetic mechanism in HFpEF

HFpEFにおける新規心保護エピジェネティック機構としてのヒストンセロトニル化

福島県立医科大学の助手、小河原崚氏のポートレート写真。白衣を着て微笑む姿。

小河原 崚(おがわら・りょう)

循環器内科学講座 助手

研究グループ

小河原 崚¹、三阪 智史¹, ²、大河内 諭¹、市村 祥平¹、三浦 俊輔¹、横川 哲朗¹、竹石 恭知¹¹ 福島県立医科大学 循環器内科学講座、² 福島県立医科大学 地域先端循環器病治療学講座

今回の受賞について

第42回国際心臓研究学会日本部会

本学会は、心血管研究の国際的な発展を目的とするISHR(International Society for Heart Research)の日本部会が主催する、心臓基礎研究の最新成果を共有する学術集会。2025年5月12日から14日にかけて奈良県コンベンションセンターで開催された。特に今回は、第25回ISHR世界大会(ISHR2025 NARA)と同時開催され、国内外から多くの参加者が訪れた。

賞について

心血管研究分野における若手研究者を奨励するための賞。ISHR2025にアブストラクトを提出した論文の内、応募時に満40歳未満であることが公募の条件であり、一次選考で5名が選ばれ、最終選考(講演)によりYoung Investigator Award最優秀賞と優秀賞が授与された。

概要

HFpEF(左室駆出率が保たれた心不全)は多因子性の疾患であり、患者数は年々増加している一方で、依然として予後不良である。そのため、病態の理解に基づいた新たな治療法の開発が強く求められている。近年、ヒストンセロトニル化が新たなエピジェネティック制御機構として注目されており、本研究ではHFpEFにおけるその役割を明らかにした。HFpEFモデルマウスでは、心臓組織においてヒストンセロトニル化の亢進が認められた。次に、ヒストンセロトニル化を担う酵素であるTGM2の心筋細胞特異的ノックアウトマウスを作製し解析を行った。その結果、TGM2欠損は、拡張機能障害、運動耐容能の低下、肺うっ血、さらには心筋細胞レベルでの弛緩障害を引き起こし、HFpEFの病態を悪化させることが示唆された。これらの結果から、TGM2―ヒストンセロトニル化経路はHFpEFにおける病態形成に深く関与しており、新たな治療標的となり得る可能性が示された。(小河原 崚)

連絡先

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