PCN Reports 最優秀論文賞(2025年6月受賞)

未治療の成人注意欠如多動症におけるドパミントランスポーター利用可能性の低下

板垣 俊太郎(いたがき・しゅんたろう)

神経精神医学講座 准教授

研究グループ

板垣俊太郎1) 大西隆2) 戸田亘1) 佐藤彩1) 松本純弥3) 伊藤浩4) 石井士朗4) 山國遼4) 三浦至1)  矢部博興1)

1) 福島県立医科大学 医学部 神経精神医学講座

2) ヤンセンファーマ株式会社メディカルアフェアーズ

3) 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神疾患病態研究部

4) 福島県立医科大学 医学部 放射線医学講座

 

今回の受賞について

【第121回日本精神神経学会学術総会】

日本精神神経学会は当初日本神経学会という名称で1902年に、精神医学の呉秀三と内科学の三浦謹之助の2名が主幹となり、会員数約200名で発会しました。また、同年に学会機関誌「神経学雑誌」も発刊されました。その後、1935年に会の名称に精神を入れ、「日本精神神経学会」と改称し、機関誌名も「精神神経学雑誌」と改められました。1946年に社団法人、2013年に公益社団法人となり、現在に至っています。2025年4月時点で20525名の学会員数です。

【賞について】

Psychiatry and Clinical Neurosciences Reports(PCN Reports)は、Psychiatry and Clinical Neurosciences(PCN)の姉妹誌として、2022年に創刊したOpen Accessのオンラインジャーナルです。2024年に、PubMed Central(PMC)、Emerging Sources Citation Index(ESCI)への収載が開始され、2025年には初めてのインパクトファクター(IF)を取得しました(2024年IF:0.9)。

今回の受賞は、最優秀論文賞として、このPCN Reports誌に2024年に公表された論文の中から、1件選出されたものでした。

概要

注意欠如多動症(ADHD)は不注意、多動性、衝動性の症状を特徴とする神経発達障害です。

ADHD は中核症状のみならず、成長するにつれてさまざまな二次的および併存症を引き起こす可能性があるため、精神医学領域で注目されています。ドパミントランスポーター(DAT)は、脳内のドパミン(DA)レベルの調節に重要な役割を果たしADHDの病態生理に関係しているといわれています。

しかしながらPETおよびSPECTによるDATの利用可能性を測定した先行研究では、結果に一貫性がありませんでした。理由として、被験者の中枢刺激薬の投薬歴が、DATの利用可能性に影響を及ぼしたと推測されるためです。

そのため、本研究では、SPECTを用いて薬物未治療の成人ADHD群と健常対象群とを比較することで、DAT利用可能性を比較しました。

その結果、本研究はADHDの側坐核におけるDAT利用可能性低下を示し、DATの活性を高めることがADHDの報酬関連症状の治療に有益である可能性を示唆しました。また、尾状核頭におけるDATの活性低下と不注意症状との関連も示し、DATの活性を高める介入が不注意症状の治療に有益である可能性を示唆しました。

以上のようにADHDの病態にDATの関与を示すエビデンスと今後の治療の可能性についての知見を提供しました。

(板垣 俊太郎) 

連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 神経精神医学講座
電話:024-547-1331

FAX:024-548-6735
講座ホームページ:https://fmu-hpa.jp/neuropsy/

メールアドレス:itasyun@fmu.ac.jp(スパムメール防止のため一部全角表記しています)

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