第22回 日本心臓核医学会 若手研究者奨励賞(令和4年6月受賞)

13 N-ammonia PET/MRI を用いた心筋血流予備能と右室ストレイン解析による予後の検討

13 N-ammonia PET/MRI を用いた心筋血流予備能と右室ストレイン解析による予後の検討

医療用白衣を着た男性が笑顔でカメラを見つめている写真。背景は淡い青色。

遠藤 圭一郎(えんどう・けいいちろう)

医学部 循環器内科学講座 病院助手

研究グループ

遠藤圭一郎、福島賢慈、喜古崇豊、山國遼、八巻尚洋、 伊藤浩、竹石恭知

今回の受賞について

日本心臓核医学会

日本心臓核医学会は心臓核医学に関する基礎および臨床研究の推進とその普及を図り、それを通じて学術文化の発展に寄与すると共に、国際協力につとめ、広く人類の福祉に貢献することを目的としています。

賞について

日本心臓核医学会では、40歳未満の若手研究者を対象に、心臓核医学に関する臨床および基礎研究について優れた研究を表彰しています。

概要

13 N-ammonia positron emission tomography (PET)は、心筋血流予備能 (MFR: myocardial flow reserve)を測定することにより、心筋血流の定量評価が可能であり、虚血性心疾患の診断および予後予測のゴールドスタンダードとされている。また、近年では心血管疾患における右室機能の重要性が注目されており、右室機能低下は虚血性心疾患の予後を悪化させることが報告されている。心臓magnetic resonance imaging (MRI)は高い空間分解能を有していることから右室機能評価に優れ、特に右室長軸方向ストレイン (RVGLS: right ventricular global longitudinal strain)解析は、より早期の心筋障害を鋭敏に検出できることが示されている。虚血性心疾患のリスクの層別化および予後予測において、MFRとRVGLSは重要な指標であるが、両者を同時に評価し、臨床的有用性を検討した報告はこれまでない。本学にはPET/MRI複合機が導入されており、PETによる機能的評価とMRIによる解剖学的評価を同時に行うことが可能である。本研究の目的は、虚血性心疾患患者に対して、 13 N-ammonia PET/MRIを用いてMFRとRVGLSを同時に評価し、心血管イベント発生におけるリスクの層別化を行える可能性を検討することである。

2016年11月から2021年3月までに当院で 13 N-ammonia PET/MRIを施行した虚血性心疾患の患者61例を対象とした。 13 N-ammonia PETよりMFR、心臓MRIよりRVGLSを算出し、中央値で2群に分けた。心血管イベントは総死亡、急性心筋梗塞、持続性心室頻拍/心室細動、心不全入院、冠動脈の血行再建とした。

観察期間中に21例の心血管イベントが発生し、イベント発生群ではイベント非発生群と比較してMFR、RVGLSは有意に低値であった。Kaplan-Meier解析では、MFRが低下している群で心血管イベント発生率は有意に高値であり、RVGLSが低下している群でも同様に心血管イベント発生率は有意に高値であった。また、MFRとRVGLSのそれぞれの中央値を用いて4群に分けてKaplan-Meier解析を行なったところ、MFRとRVGLSがともに低下している群で、最も心血管イベント発生率が高かった。Cox比例ハザードモデルにおいて、MFR、RVGLSは心血管イベントの独立した予後予測因子であった。

虚血性心疾患患者に対する、 13 N-ammonia PET/MRIによる心筋血流予備能と右室ストレインの同時評価は、心血管イベント発生のリスクの層別化に有用であることが示された。 13 N-ammonia PET/MRIを用いて、心筋血流の指標である心筋血流予備能 (MFR: myocardial flow reserve)とMRIでの右室機能評価である右室ストレイン解析を組み合わせ、虚血性心疾患における心血管イベント発生のリスク層別化に有用であることを示した。

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