第44回日本腎臓病学会東部学術大会大会長賞 〔平成26年10月受賞〕

「小児期発症C3腎症と膜性増殖性糸球体腎炎の臨床・疫学と  予後の比較検討」

医療現場で白衣を着た男性が椅子に座っている様子。背景には書類やファイルが整理されている。

川崎 幸彦(かわさき・ゆきひこ)

児科学講座 准教授

今回の受賞について

【一般社団法人日本腎臓学会】
腎臓学及びこれに関連する諸分野の研究調査を行うと共に、知識の普及を図り、もって学術の発展に寄与することを目的に設立された1万人弱の学術団体です。

【第44回日本腎臓病学会東部学術大会大会長賞】
学術大会で発表された408演題中査読委員の採点で選ばれた優秀演題の中から特に優れている演題を大会長の判断で選出することで、演題内容とその関連の業績を表彰したものとされています。

概要

【はじめに】近年、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)と関連して補体経路のalternative pathwayに起因する新たなC3腎症が報告されており、従来からの古典的MPGNと異なる疾患概念が提唱されている。しかし、現在まで小児期発症C3腎症の臨床や疫学および治療反応性に関する報告例は少ない。今回、私達は、C3腎炎と古典的MPGNの臨床的特徴や予後を比較検討した。【対象】対象は当科で1975から2010年までMPGNと診断した患児37例をC3腎炎群と古典的MPGN群に分け、疫学、臨床症状と腎生検組織像や治療反応性および予後について比較検討した。【結果】1)C3腎炎患児は観察期間初期から認められ、MPGN患児の約半数を占めており、発症時平均年齢は10。4歳で、女児が72%を占めていた。2)C3腎炎群では、古典的MPGN群と比較して発症時血清C4値が低値を示す症例が少なく、治療後も血清C3が低値を示す患者数が多かった。3)再生検施行例では、C3GN群では古典的MPGN群と比較して急性・慢性変化が強い傾向があり、糸球体内マクロファージ浸潤スコアーやα-SMA陽性スコアーが高値であった。4)最終観察時、C3GN群では蛋白尿残存例や腎機能低下群が多くみられた。【結論】C3腎炎は従来のMPGN症例中約半数を占めており、古典的MPGNと比較して発症時蛋白尿量が少なく血清C3値が低値で治療不応例が散見された。

(川崎 幸彦)

関連サイト

連絡先

ページの先頭へ戻る