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宇宙論的距離

天体までの距離には幾つかの見積もり方がある。最もポピュラーなのが,角度 距離と光度距離である。前者は,同じ大きさのものでも近くにあると大きく 見え,遠くにあると小さく見えるということに基づいた距離測定法である。後者 は,見かけの明るさは距離の2乗に反比例するということに基づいた距離測定法 である。どちらの距離測定法も,Friedmann-Lemaîreモデルでは容易 に計算できる(この計算法をMattigの公式という)。

Mattigの公式に基づいて距離を求めるのは,ある意味正確で ない。というのは,この公式では一様等方な宇宙が仮定されているからだ。 実際の宇宙には,銀河があり星があり惑星があり,様々な階層の非一様性が 存在している。この非一様性はFriedmann-Lemaîtreモデルでは一切考慮され ていない。この非一様性を考慮するということは,非一様性によって生じる重力 レンズ効果を考慮することである。重力レンズ効果を受けると,光源の大きさも, 明るさも変わる。従って,上記の角度距離も光度距離も大きく重 力レンズ効果の影響を受ける。

Mattigの公式は,ある意味すべての非一様性を均すことによって,重力レンズ効 果も予め取り入れた距離測定法である。これに対して, Dyer & Roeder (1972,1973)は,宇宙に存在する物質を一様に分布する部分と非一様に 分布する部分とに分け,通常の距離を決めるときは一様に分布する部分のみを考 慮し,光が銀河のような非一様性の近くを通るときの光源までの距離を見積もる ときは,改めて,その非一様性による増光効果を取り入れたらよいのではないか と,提案した。このような距離測定法をDyer-Roederの公式という。


yoshidah
平成17年7月21日