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相対論的宇宙論

Einsteinは一般相対性理論を完成させると,この理論で宇宙を記述しようとした。こ のとき,「宇宙原理」と呼ばれる原理を適応した。これは,「宇宙は 一様・等方(=宇宙はどこでも,どの方向でも同じように見える=我々は特別のと ころに存在するわけではない)」というものである。この原理から当時の共通認 識であった「静的宇宙(不変な宇宙)」のモデルを作ろうと試みたが,結果的に失 敗した。なぜなら,物質によって生じる重力(引力)で宇宙が潰れてしまうからで ある。苦肉の策として宇宙が潰れないよう反発力として導入したのが,現在宇宙 項$\Lambda$と呼ばれる力である。

これに対して,Friedmannは1922年,宇宙項を導入しなくても潰れない一様等方 な宇宙モデル(膨張宇宙モデル)を発見した。更に,Lemaître(1927)は,宇宙 項入りでもFriedmannのモデルと同じようなモデルが作れることを示した。これ らのモデルはそのモデルに含まれる2つのパラメータ(宇宙項と密度パラメータ) で全く異なる構造に分類できる:永遠に膨張が止まらない「開いた宇宙」, 膨張の勢いは止まるが膨張は止まらない「平坦な宇宙」,やがて膨張は止まりあ る時点から収縮していく「閉じた宇宙」。このモデルをFriedmann-Lemaître モデルという。現在では,このモデルが宇宙の平均的な姿を良く記述していると して,広く受け入れられている。

「宇宙は膨張している」ことを観測的に示したのがHubbleであった。Hubbleは 1928年,遠方の銀河までの距離の測定から,「遠方の銀河ほど速く遠ざかってい る(後退している)」ことを発見した。これがHubbleの法則である。また,銀河の 後退速度と銀河までの距離の間の比例定数がHubble定数である。

一般に観測者に対して運動している物体から発せられる波にはDoppler効果が生 じる。近づいてくる救急車のサイレンは通常より高く,遠ざかるときは低く聞こ える。これがDoppler効果である。一般に,Doppler効果で波の振動数が低くなる と波長が伸びる。光も波の1種なので,光源が観測者に対して遠ざかれば, このDoppler効果を受けて光の波長は伸びる。この伸びが「赤方偏移」と呼ばれ るもので,光の場合近似的に遠ざかる光源の速さに比例する。従って,Hubble の法則は赤方偏移と光源までの距離との関係を与える。つまり,赤方偏移 は天体までの距離の指標として使うことができる。


yoshidah
平成17年7月21日