研究成果が雑誌に掲載されました
当センター所属教員による研究の成果が、英国雑誌“Scientific Reports”に掲載されました。
掲載雑誌
英国雑誌 “Scientific Reports”
標題
Feasibility of cancer-stem-cell-targeted radioimmunotherapy for acute myelogenous leukemia using 211At-CXCR4 monoclonal antibody
研究者
織内 昇、粟生木 美穂、右近 直之、鷲山 幸信、譚 成博、
下山 彩希、西嶋 剣一、髙橋 和弘、伊藤 浩、趙 松吉(先端臨床研究センター)
池添 隆之(血液内科学講座)
概要
腫瘍組織を構成する癌細胞は、多様な細胞集団であり、多様性のもととなる細胞が癌幹細胞であることが分かっています。癌幹細胞は、抗がん剤などの治療に抵抗性を示す腫瘍細胞のクローンを誘導し増殖するため、治療が無効となり悪性度が増すと考えられています。したがって、癌幹細胞を標的とした治療が、がんの制圧には不可欠と考えられます。
CXCR4という分子は、癌幹細胞に広く発現し、癌細胞の増殖、浸潤ならびに転移を促進させることが知られています。私たちのグループは、細胞障害性の強いα線を放出するアスタチン211(211At)を標識した薬剤による、CXCR4を標的とした治療の可能性を探る研究を行いました。
この研究では、211Atを結合させたCXCR4に対する抗体(市販のものを使用)(211At-CXCR4 mAb)をヒト急性白血病の細胞を移植した動物モデルに投与し、その体内動態から腫瘍と正常臓器の吸収線量をもとに治療効果を推定したところ、211At-CXCR4 mAbは、正常臓器の障害が許容範囲内で腫瘍細胞に十分な線量を与えることが示されたことから、この治療は急性白血病の幹細胞を標的とする治療法として有効である可能性が示唆されました。
この研究の成果は、新しい治療法として海外でも注目を集め、本学が研究を進めている211Atによるがん治療の開発につながる成果です。
なお本研究は、科学研究費助成事業 基盤研究(B)(16H05393)として実施したものです。