Cognitive Neuro Physiology (CNP) チーム

事象関連電位 (Event Related Potential: ERP)

電気生理学的手法であるERPは光や音、あるいは自発的な運動といった特定の事象に関連して一過性に生じる脳電位で、自発脳波に重畳して記録されます。我々はこのERPを利用して、様々な精神疾患の病態解明を行ってきました。

ERPに関する実験手法を示す図で、聴覚刺激に基づくタスクと脳波の波形が表示されています。

ミスマッチ陰性電位(mismatch negativity: MMN)

MMNは、Näätänen によって発見されたERP成分の1つであり、聴覚性感覚記憶を基盤とした自動的な無意識認知を反映する精神生理学的反応です(Näätänen et al. 1978)。発生源と機能的意義が確認されていて、側頭葉成分は変化の検出を、前頭葉成分は注意の転換を反映すると考えられています。例えば統合失調症患者では上側頭回といわれる脳部位の特異的萎縮が認められますが、それに先だってMMNが減衰することも知られています。様々な精神疾患の感覚記憶の障害の程度を明らかにして、各疾患の早期発見、診断の根拠になりうるかを研究しています。

MMNに関する研究を示す図で、脳波測定装置やグラフ、実験中の女性の写真が含まれています。

MMNと記憶単位

ヒト脳には聴覚環境の変化を自動的に検出するメカニズムが備わっており、音を無意識的に検出する防御機構を生存競争の過程で発達させてきました。その基盤にある感覚記憶は、上側頭回の一次聴覚野近傍に最大の発生源を持つMMNに反映され、聴覚事象の感覚記憶痕跡と逸脱事象の前注意的な比較過程が反映されています(memory trace theory)。私たちは、種々の要素の膨大な情報が、時間統合(temporal integration; TWI)機構によって約160-170msの時間方向の感覚記憶に詳細に符号化され記憶されている事を明らかにしてきました。現在我々は単純音(ピープ音など)や音声など様々なパラダイムを利用して、MMN研究を実施しており、今後も成果が期待できると考えています。

MMN研究の広がりを示す世界地図、主要な研究拠点に星マークが付いている。

学生、研修医のみなさんへ

ERPは馴染みが無く難しい概念のように思えるかもしれませんが、非侵襲的かつ簡便に認知機能を測定出来る有効なツールです。当施設は日本でも有数のMMN研究の拠点であり、国内学会でのシンポジストの依頼も多く、英文雑誌や国際学会でも活発に成果を発表しております。チームの一員である志賀哲也先生はMMN の研究のため、2014年4月から2015年3月までバルセロナ大学に留学し、現在はその知見をいかして当講座で研究を続けています。また2021年には、MMNの国際学会であるMMN2021: The 9th Mismatch Negativity Conferenceを、アジア圏として初めて当講座が主催し、福島県で開催予定です。今後ますます発展が望まれる分野です。みなさんも、ぜひ私たちと一緒に研究活動をしてみませんか。

研究業績

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