教授挨拶

当講座のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
福島県立医科大学は、昭和19(1944)年に福島県立女子医学専門学校(女子医専)として創立されました。創立当初より、当講座は「細菌学講座」として教育・研究を行ってきました。初代教授は、宮路重嗣先生であり、新潟大学医学部細菌学(当時衛生学細菌学教室)の新潟大学医学部細菌学(当時衛生学)の初代教授を務めたのち、当講座の初代教授に着任されました。宮路重嗣先生は、当時問題となっていた黄疸出血性スピロヘータ(レプトスピラ)、流行性感冒病原体(インフルエンザウイルス)などの研究を精力的に遂行されました。その後、当講座はウイルスを研究対象にしたことで、講座名も「微生物学講座」に変わりました。五代目として、小生が教授職を拝命しました。奇しくも、宮路重嗣先生と同じく、新潟大学医学部細菌学から当講座に着任しました。講座としても、まさに、原点に立ち返ることができたと考えております。
私は、呼吸器内科医としての臨床経験をもとに、結核・非結核性抗酸菌症の病原体について、研究を進めてきました。結核は三大感染症のひとつであり、現在も世界で毎年125万人が死亡しています(WHO 2023)。結核に対しては抗結核薬で多くは治療可能ですが、多剤耐性結核の場合は治療が困難です。また、非結核性抗酸菌症はわが国を含めアジア、欧米などで急増している難治性呼吸器疾患です。結核と異なり非結核性抗酸菌症に対しては特効薬がなく、患者数は増加する一方です。2022年の厚生労働省の人口動態調査では、非結核性抗酸菌症による死亡者数は1,158人でした。10年死亡率は、4.8%と報告されています。このような結核・非結核性抗酸菌症を引き起こす病原体に対して、ゲノム解読、マウス感染実験、遺伝子変異株作製と次世代シーケンサーを組み合わせた機能ゲノム解析を行い、病原性発現機構の解明や新規薬剤標的の同定、ゲノム多様性からみた菌の進化を解明してきました。
これまで成果を出せたのは、大阪刀根山医療センター、大阪公立大学医学部、米国国立衛生研究所(NIH/NIAID/Tuberculosis Research Section)、新潟大学医学部での在籍中に御指導を賜った先生方、および本邦・海外の共同研究者の方々のおかげです。講座主宰者となった今、自身が主体となって、非結核性抗酸菌症に対する新規薬剤開発に踏みこむ時が来た、と自覚します。成果を出すためには、講座として、資金と物的資源の確保が重要です。さらに、最も肝心なのは、優秀かつ協調性のある人材を確保することです。教室員が意欲的、かつ、自由闊達に教育・研究を行えるよう、盤石な講座運営を行って参ります。医学界全体に認められるよう、質の高い研究成果を発信しつづけ、臨床に還元できる成果につなげるよう、全力で取り組んでまいります。
また、微生物学講座として、細菌・ウイルス双方を含めた学生教育と研究の使命もあります。臨床では重要なものの基礎研究の進んでいない病原体の研究にも着手したいと考えています。その際には、結核・非結核性抗酸菌症の研究で培ってきた経験が大いに役立つと考えています。
感染症の研究に興味がある方、あらたな真実を探求して医学に貢献したい方、まずは、教室の扉を叩いてください。ご連絡をお待ちしております。
プロフィール | 大阪市立大学(現、大阪公立大学)医学部 2000年卒 博士(医学、大阪市立大学) 医師 |
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研究テーマ | 非結核性抗酸菌症の病態形成機構の解明と新規治療薬開発 |
メッセージ | 微生物学は奥が深い学問です。基礎・臨床両面で成果を還元できます。一緒に頑張りましょう。 |
座右の銘 | Von Herzen möge es wieder zu Herzen gehen |