糖尿病内分泌代謝内科「基礎上級実習」開講

令和8年度の「基礎上級実習(医学部4年生)」を開講しました。当講座では、毎年意欲あふれる学生たちを受け入れて研究の面白さを伝えています。今年度は、新たに2名の学生を迎え入れました。学生たちには基礎的な実験手技の習得から、最新の学術研究に直接触れる研究活動まで、一連のプロセスを系統的に学んでもらいます。

研究活動

【研究概要】(基礎研究部門)

当科で行っている基礎研究をご紹介いたします。

糖尿病関連腎臓病(DKD)の進展機序解明
〜カテコールアミン・シフトと空間オミクス解析からのアプローチ〜
「カテコールアミン・シフト」仮説に基づく病態進展メカニズムの解明
現在、糖尿病の個別化医療を推進するため、データ駆動型解析に基づく5つの病態サブタイプ分類が世界的に注
目されています。その中で、重症インスリン抵抗性を主徴とする「SIRD群」は、同様に肥満形質を持つ「MOD群」と
比較して独立して腎予後が著しく不良です。この事実は、腎症進展の決定要因が単なる肥満や高血糖といった臨
床指標のみにあるのではなく、インスリン抵抗性病態下で生じる「特定の分子メカニズム」が腎機能低下を不可逆
的に加速させていることを強く示唆しています。 当研究室では、この未知なる分子メカニズムの核心に迫るべく研
究を行っています。
一般に、糖尿病腎症の悪化には交感神経活動の亢進に伴うノルエピネフリン(ノルアドレナリン)の増加が関与す
るとされています。当研究室ではこれまでに、病態の初期段階において内因性腎ドパミン機構が代償的・保護的
に活性化すること、そしてその主要な起源が腎交感神経であることを世界に先駆けて見出してきました。 この知見
を基盤として、私たちは新たに「カテコールアミン・シフト」仮説※を提唱し、研究を進めています。現在、異所性脂
肪蓄積や脂質代謝異常がいかにしてこの「代謝性シフト」を駆動するのかを分子レベルで追究し、カテコールアミ
ン・バランスの是正を基盤とした独自の重症化阻止戦略の確立を目指します。
※【カテコールアミン・シフト仮説】 初期には保護的に作用していた腎交感神経内のドパミンが、脂質代謝異常など
に起因する局所の低酸素環境下において、ドパミン優位からノルエピネフリン優位となり、一転して腎障害の増悪
因子へと変貌を遂げる病態仮説。

「イメージングマスサイトメトリー(IMC)」を駆使した空間病態解析と薬理機序の解明
上記のような複雑な組織微小環境における代謝・炎症・酸化ストレス応答の連関を解き明かすため、当研究室で
は最先端の空間オミクス技術であるイメージングマスサイトメトリー(IMC)を導入しています。 IMCは「単一細胞レ
ベルの解像度」を有し、数十種類以上の抗体を同時に検出できる超多次元的な空間解析プラットフォームです。
現在、この強力な技術プラットフォームを用いて以下の検証を進めています。

  1. 1.SGLT2阻害薬による腎保護・酸化ストレス軽減メカニズムの可視化
    長期薬剤投与モデルの解析により、CD11b陽性細胞の浸潤動態や、酸化ストレスマーカー(4-HNE、8-OHdG)の局在が単一細胞レベルで劇的に変化する現象を捉えることに成功しています。
  2. 2.特定の細胞内における薬理効果の空間マッピング
    従来の組織評価法では不可能であった「どの細胞で、いつ、どのような分子ストレスやカテコールアミン動態の変化が起きているか」を空間情報として可視化し、詳細なシグナル伝達経路を特定します。

分野を超えたコラボレーションを目指して
当研究室は、「独自の病態仮説(カテコールアミン・シフト)」と「最先端の組織解析技術(IMC)」を両輪として、糖尿病関連腎臓病の克服に挑んでいます。微小環境におけるカテコールアミン代謝や空間生物学的な解析アプローチにご興味のある研究者・企業の皆様、そして共に未来の医学を切り拓く熱意ある学生の皆さんの参画を心よりお待ちしています。

(文責 糖尿病内分泌代謝内科学講座 堀田彰一朗 講師)

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