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平成27年度 「適応回路シフト」研究室滞在支援制度報告

派遣者:上田(石原) 奈津実、増田 博紀  申請者:木下 専(公募班)
    (名古屋大学大学院理学研究科 生命理学専攻 木下専研究室)
滞在先:日置 寛之先生(公募班)、孫 在隣先生
    (京都大学大学院医学研究科 高次脳形態学教室)

成熟神経回路のアクチンのリモデリングは、シナプス機能を再編成し続け、動的に維持しています。しかし、記憶の構造的基盤(形態的・機能的可塑性)の根底にある細胞骨格制御機構についての詳細は十分に解明されていません。木下研究室では、ニューロンやグリアで高発現するGTP結合蛋白質セプチンが、空間学習・記憶を評価する複数のパラダイムにおいて一貫した機能障害を呈することを見出しています。この表現型は、空間学習・記憶に関する未知の分子メカニズムの解明への糸口になると期待し、海馬プロテオーム、生化学的検証、急速凍結・凍結割断レプリカ標識(SDS-FRL)法を用いた高空間分解能解析を進めています。興味深いことに、連続切片の免疫電子顕微鏡像3D再構築(ssTEM)法でスパイン体積、PSD面積、シナプス密度(形態的指標)は正常であることを見出しています。セプチンはアクチンとは異なり、シナプス形成や形態維持には必要でないことが示唆されましたが、マクロな視点で形態が変化しているか否かは不明です。そこでシンドビスウィルスベクターを用いた神経細胞標識技術習得をし、組織染色レベルで突起長、分岐数、シナプス密度を解析することとしました。本支援に採択頂き、細胞標識のパイオニアである京都大学大学院医学研究科高次脳形態学教室に滞在し技術を習得する機会を頂きました。滞在期間中一連の実験を見学させて頂き、条件検討まで進めることが出来たため、名古屋大学に戻りすぐにでも論文に掲載できるデータが取得できる勢いです。専門家である日置先生、孫先生に直接アドバイス頂いたこと、実際にプロトコールを読んだだけでは記載されていない細かなコツを習得できたことが最大の要因だと考えています。一緒に研究室滞在支援に参加した大学院生も「先生方には実験技術を見学中の私の質問に対して真摯にお答え頂き感謝しております。おかげさまで実験技術の形だけを真似るのではなく、各作業の意味や注意点等を意識して学ぶことができ、今後のデータ取得に向けて意義のある滞在になりました。」と感想を述べております。また滞在期間中、日置先生、孫先生方と研究内容に関して議論する機会を頂き、滞在型支援の醍醐味である交流も楽しむことが出来ました。

最後に快く受け入れて下さいました日置先生、孫先生に感謝すると共に、このような機会を与えて下さいました「適応回路シフト」領域の皆様に御礼申し上げます。

 

 

 

 

 

*写真は実験指導最中の風景(右から日置先生、増田、上田、孫先生)。

投稿日:2015年10月02日