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平成30年度 「適応回路シフト」研究室滞在支援制度報告

派遣者:鹿野 悠(派遣者)  申請者:佐々木 拓哉(公募班)
    (東京大学 大学院薬学系研究科 薬品作用学教室)
滞在先:相澤 秀紀先生(計画班)
    (広島大学 医学部 神経生物学)

 
 中枢神経による学習や記憶のメカニズムを明らかにするために、様々な記録手法を駆使して世界中で研究が進められています。私たちはこれまで、行動課題を学ばせたラットを用いて、海馬や線条体に慢性的に刺入した電極から神経発火を記録してきました。これらに加えて、ドパミンやセロトニンといった神経修飾物質は脳機能に重要な役割をもっています。しかしながら、こうした神経修飾物質と神経発火との関連は詳細に検証されておらず、さらに研究を発展させるためには行動課題中のラットから神経修飾物質濃度を計測する手法が不可欠でした。しかしながら本研究室では直接的かつ即時的に神経修飾物質濃度が測定できる手法を持ち合わせておりませんでした。そこでこの度、この研究室滞在支援制度を活用して、2018年12月17日~19日の3日間研究室にお邪魔し、電気化学法についてご指導いただける運びとなりました。
 滞在中にはまず電気化学法(サイクリック・ボルタンメトリー)の手法全般についての解説をしていただき、炭素電極の作成から実際に作業を体験させていただきました。直径0.007mmしかないカーボンファイバーをガラスキャピラリーに挿入して作成するという極めて微細な作業でした。次にドパミンを記録する際に用いる記録装置について、実物を見ながら解説して頂きました。現在使用されている機器はもちろんのこと、相澤先生が以前からご自身で電子回路を組まれて作製された数多くの装置を拝見し、その原理について詳しく学ばせて頂きました。そして最後に私の作成した電極を用いて、マウスからドパミンを検出しました。内側前脳束の電気刺激に伴い、側坐核からドパミンが迅速に放出される様子を観察することができました。
 現在私は、相澤先生にご指導いただいた経験をもとに、自身の研究室においても自由行動下の動物から電気化学法を導入するために準備を進めています。導入後は、従来私が実施してきている電気生理記録と組み合わせて同時実施することを目指します。最後に、ご多忙の中滞在を快く引き受けてくださり直接ご指導くださいました相澤先生、私の滞在をサポートしてくださった研究室のみなさま、さらに領域代表の小林和人先生をはじめ研究支援委員会の先生方に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。



※ 得られた結果について解説して頂いている様子(左:相澤先生、右:鹿野)

投稿日:2019年09月03日