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平成30年度 「適応回路シフト」研究室滞在支援制度報告

派遣者(申請者):高橋 真有(公募班)
    (東京医科歯科大学)
滞在先:伊佐 正先生(計画班)
    (京都大学)

 
 随意性眼球運動系におけるセントラルドグマと言われるListingの法則(サッケードや滑動性眼球運動は、第一眼位からの眼球運動では、回旋成分を含まず、水平と垂直成分のみである。前庭動眼反射は、この法則の例外である)の中枢神経機構を明らかにするため、訓練したサルでDREADD法を用いて、これまでネコでの電気生理・解剖実験で詳細に明らかにした中脳・脳幹の回路の一部を選択的経路遮断し、その前後の眼球運動を計測することで、その回路の機能を機能的に証明する実験を継続して行っている。
 昨年度に引き続き、ウィルスベクターを注入したサルでの眼球運動解析実験を行ったが、本年度はCNO(clozapine-n-oxide)の代わりに、放医研の南本先生のご協力でC22bを使用した。また、本年度も、ほぼ毎週、火曜日から金曜日まで東京から京都大学に通い、訓練したサルの眼球運動計測と、新たな眼球運動の訓練を行った。現在そのデータを解析しつつ、コイルでなくカメラ画像による回旋成分解析システムを立ち上げている。これまで、随意性眼球運動系は水平・垂直の2次元の自由度からなる、と考えられてきたが、実際は、水平・垂直・回旋からなる3次元の座標軸が用いられている。そのため、回旋成分を解析する必要があるが、回旋を記録解析するためには、2個のコイルを用いたシステムが必要であるが、種々の理由からこれが困難であるため、ビデオカメラを用いた解析システムを構築した。高速赤外線カメラ(sampling 500Hz)を用いたカメラシステムによる回旋成分の解析はこれまでほとんど行われていないため、色々な問題が生じており、それを一つずつ克服しながら、解析システムを、徐々に作り上げてきた。さらに、大きな問題は、サルは虹彩紋理がヒトに比べ非常に曖昧であり、瞳孔とのズレを検知するにも、工夫が必要であり、そのため、パターンマッチングの方法をさらに精度を上げて改良を行った。
 このように、すでに訓練されたサルでの眼球運動解析システムの改良と、新しいサルに種々の眼球運動パラダイムを訓練し、ウィルスベクター投与準備を行った。
 
 平成27年度より2年間公募班員として、また平成29年度より研究室滞在支援制度により、このプロジェクトに多大なご支援をいただきまして、本当にありがとうございました。伊佐先生をはじめ、適応回路シフト領域代表の小林和人先生、研究支援委員会の先生方に厚く御礼申し上げます。

投稿日:2019年09月03日