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【開催報告】新学術領域研究「人工知能と脳科学」「適応回路シフト」
研究戦略合同ワークショップ・合同領域会議(沖縄科学技術大学院大学)

2018年5月上旬、沖縄科学技術大学院大学(OIST)にて、新学術領域研究「人工知能と脳科学」「適応回路シフト」の合同ワークショップおよび合同領域会議が開催されました。ここでは、今回の活発な学術交流の様子を報告します。

 
研究戦略合同ワークショップ (2018.5.9)

 2018年5月9日、沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学(OIST)において、「適応回路シフト」領域と「人工知能と脳科学」領域(領域代表者:銅谷賢治先生)の合同で、研究戦略ワークショップを開催しました。当領域では、研究戦略ワークショップを毎年開催して、適応回路シフトを多角的に探るための研究手法や成果を紹介しています。今回、当領域からは、研究室滞在支援制度を利用した研究班を中心とする講演者5名の方に、領域内の共同・連携研究を含む研究活動の進捗と成果を紹介していただきました。銅谷領域でも講演者2名の方に学際的な研究活動の紹介をお願いしました。
 トップバッターは銅谷領域の谷口忠大先生(立命館大学)でした。「ビブリオバトル」を通じて議論形成のあり方を考える、合同ワークショップの第一話に相応しい興味深いお話でした。続いて、小坂田文隆先生(名古屋大学)が最新のウイルスベクターを駆使したマウスの視覚野研究の展開について紹介されました。山中章弘先生(名古屋大学)は、レム睡眠の誘導に関与する視床下部のメラニン凝集ホルモンが記憶の制御にも関わっているという研究を紹介されました。平田たつみ先生(国立遺伝学研究所)は、独自に開発した誕生日タグ付けマウスの詳細な情報と有用性について話され、飛田秀樹先生(名古屋市立大学)は、内包出血させた動物において健常側を拘束するリハビリテーションにより運動機能が回復するメカニズムについて話されました。銅谷領域の坂上雅道先生(玉川大学)は、サルの前頭前野の皮質脳波信号から価値情報をデコーディングした研究をお話しされました。最後に、木下専先生(名古屋大学)は、セプチンSept3欠損マウスは海馬歯状回に異常をきたして空間弁別の障害が生じることを示されました。
 その後、特別講演として、海馬の神経解剖学で著名なノルウェー科学技術大学のMenno P. Witter先生が、海馬3領域と嗅内野の投射結合や機能に関する研究の歴史を丁寧に振り返り講演されました。当領域の研究者とも共同研究が進んでいるとのことで、将来の海馬・嗅内野の研究の発展がとても楽しみに感じました。
 「適応回路シフト」領域は最終年度となりましたが、銅谷領域との学際的な研究紹介と議論の場を共有できたことで、新たな研究の芽が生まれる可能性を予感できたワークショップとなりました。

報告:礒村宜和(玉川大学)



 

写真:沖縄科学技術大学院大学の風景(上)、ワークショップ集合写真(下)

 

合同領域会議 (2018.5.10-11)

 2018年5月10日-11日に、「人工知能と脳科学」「適応回路シフト」研究戦略合同ワークショップに引き続いて、沖縄科学技術大学院大学(OIST)において、2つの領域の合同領域会議を行いました。「適応回路シフト」領域では、以前より、神経回路研究に数理モデルを応用し、学習や損傷回復の基盤となるメカニズムの解明を推進するという目的で、数理モデルに関するチュートリアルやワークショップを開催してきました。OISTの銅谷先生は、数理モデルの専門家であり、本領域の評価委員も務めていただいておりますので、今回、銅谷先生が領域代表をされる「人工知能と脳科学」領域と合同で領域会議を持つことによって、数理モデルの研究者との交流をより促進できるのではないかと考え、2つの領域の合同会議を開くことといたしました。全体で約140名の方の参加があり、OISTの広いセミナールームが一杯になるほど盛況な会議をとなりました。銅谷先生はじめ、OISTの皆様の多大なご尽力により、ワークショップも含め、たいへん有意義な会議を持つことができましたことを、この場を借りて深くお礼申し上げたいと思います。
 合同領域会議では、「適応回路シフト」領域からは、数理モデルを応用した研究や第二期から参画いただいた新しいメンバーの先生方を含め、10班に口頭発表をお願いしました。計画班からは、小池康晴先生(東工大)、酒井裕先生(玉川大・礒村班)、渡邉大先生(京都大)、伊佐正先生(京都大)に、公募班からは、能瀬聡直先生(東京大)、井上謙一先生(京都大)、宇賀貴紀先生(山梨大)、谷本拓先生(東北大)、佐々木拓哉先生(東京大)、Dr. Thomas McHugh (Riken)、小早川令子先生(関西医大)にお願いし、発表をしていただきました。「人工知能と脳科学」領域からは、数理モデルや人工知能等に関わる16題の口頭発表をしていただきました。5月10日の夕方に、カンファレンスセンターにおいて、ポスターセッションを行いました。そこでは、全体で、65題のポスター発表があり、大いに議論が盛り上がりました。このような研究交流を通じて、われわれがこれまで進めてきた数理モデルの応用の機運を高め、これまでの共同研究や連携がますます進展するとともに、新たな研究が生まれれば、領域全体の活動にとってもたいへん有意義な成果に繋がると確信しています。
 また、合同領域会議の後、OISTの先生方のご好意で、キャンパスツアーとラボツアーを行っていただきました。キャンパスからは、沖縄の美しい海や遠くの島々が見え、素晴らしい景観を満喫することができたばかりでなく、OISTの最先端の設備や芸術的な建造物に眼を奪われました。ラボツアーでは、神経科学や数理モデルに関する2つの研究ユニットに属される6つの研究室を、それぞれのグループに分けて見学させていただきました。最先端の研究を紹介いただくとともに、オーガナイズされた研究室を見学し、活発な研究者のみなさんと交流することができ、有益な体験をすることができました。
 さきのワークショップのまとめにもありましたが、「適応回路シフト」領域は本年度が最終年度であり、この5年間の活動から研究のゴールにむけて邁進しているところであり、5年間の成果のとりまとめに向かって準備をはじめたところです。残りの1年間の活動も重要ですし、そこに今回学んだ数理モデルの研究手法を導入し、本領域の主題である「環境や状況に応答して行動を適合化する神経回路シフトの仕組みの理解」を深めていきたいと考えています。

報告:小林 和人(領域代表)


 
 

写真:小林和人 領域代表(左上)、銅谷賢治 領域代表(右上)、合同領域会議集合写真(下)

 

投稿日:2018年06月25日