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平成29年度 「適応回路シフト」研究室滞在支援制度報告

派遣者(申請者):高橋 真有(公募班)
    (東京医科歯科大学)
滞在先:伊佐 正先生(計画班)
    (京都大学 生理学研究所)

 
 当初DOX法を用いて実験を開始したが、DOX法では、薬物投与後効果が出現するまで日数がかかるため、種々の関連効果を解析するには、遮断効果が薬物投与後早い方が良いと考え、DREAD法に変更して実験を行った。平成28年度に引き続き、左右の上丘にそれぞれ逆行性と順行性ウィルスベクターを二重感染させた1頭目のサルにCNO (clozapine-n-oxide)を投与し、その前後での眼球運動を解析する実験を行っている。これまで得られたデータをもとに検討した結果、サルに固視させている時間を長くしたほうが、上丘の機能を遮断した効果により変化がみられるのではないかと考え、サルに視覚誘導性サッケードだけではなく、遅延性サッケードを訓練して、CNO投与前後のサッケードの軌道および反応時間などを解析することにした。遅延性サッケードは視覚誘導性サッケードにくらべ、難易度が高く、毎週東京から京都に通いながら訓練を続けてきたが、この訓練に時間を要した。想定した結果が一部みられるものの、個体数を増やす必要があると考えられた。本実験の遂行中に、CNOがblood-brain-barrierを通過しないと言う論文が、げっ歯類の実験で示されたので、経時的に採血を行い、現在clozapineの血中濃度と、CNOの血中濃度を測定している。
 また、すでにチェアトレーニングを進めていた2頭目のサルに対しMRI撮影後ヘッドポストを装着する手術を行い、頭部を固定した上での眼球運動の訓練が進行中である。
視覚誘導性サッケードが完成した段階で、ウィルスベクターを投与する前にCNOを投与し、CNOそのものの影響をみようと考えている。ウィルスベクターを注入する上丘の正確な位置を決めなくてはならないが、伊佐研の生理研から京大への異動に伴い、実験室を新たに立ち上げる事が必要になり、現在、ユニットを記録する神経生理学実験のためのシステムを構築している。
 さらに別の2頭のサルについて、すでにチェアトレーニングが進んでおり、近日中にヘッドポスト装着の手術を行って、頭部を固定した上での訓練を開始する予定である。
 
 サルの慢性実験をこのように東京と京都を週の約半分ずつ行き来して行うことの難しさを日々痛感しておりますが、伊佐研の充実した研究支援体制のおかげで、なんとか継続することができております。ようやく結果が出始めてきたところですので、なんとか最後まで継続して共同研究を行い、しっかりと成果をだしたいと思っております。
 このプロジェクトを遂行するにあたり、多大なご支援をいただいております伊佐教授、伊佐研の皆様、そして「適応回路シフト」領域代表の小林和人先生ならびに研究支援委員会の先生方に厚く御礼申し上げます。

投稿日:2018年04月09日