公募研究

  • Home >
  • 公募研究 > 
  • 小早川 令子(関西医科大学付属生命医学研究所)

小早川 令子(関西医科大学付属生命医学研究所)

「先天的と後天的な恐怖情動を制御する神経メカニズム」

嗅覚入力による先天的と後天的な匂い情報は鼻腔内の背側と腹側のゾーンで分離して脳へ伝達される。背側ゾーンの嗅細胞を除去したマウスは、猫の匂いを感知できるし、後天的に危険を学習できるが、先天的な忌避行動を示さない(Kobayakawa et al., Nature 2007, Matsuo et al., PNAS 2015 )。分離して脳へ伝達された先天的と後天的な情報はどのように処理されるのだろうか?両者の情報は、扁桃体中心核のセロトニン2A発現細胞で統合され、先天的な恐怖が促進される一方で、後天的な恐怖が抑制されるという、先天的恐怖優先の階層性制御を受けるという予想外の事実が明らかになった(Isosaka et al., Cell 2015)。先天的と後天的な恐怖は恐怖中枢において同一の情動状態へと統合されるのではなく、拮抗的な関係にある異なる情動状態として存在することが示唆される。そうであれば、恐怖情動を真に理解するためには従来から研究されている後天的な実験系のみでは不十分で、先天的な恐怖情動を扱う新たなモデルが必要となる。このような背景で、私たちは天敵臭の化学構造を人工匂い分子ライブラリーを用いて最適化することで、極めて強力な先天的恐怖行動を誘発する活性を持つ人工匂い分子群(Thiazoline-related fear odors: tFOs)の開発に成功した。tFOsはその種類に応じて多様な行動や生理応答を誘発する活性を持つ。この特徴を活用し、本計画では、感覚系が刺激の意味を判断するメカニズム、判断に応じた適切な情動状態や行動の誘発を担う脳領域や神経細胞、先天的恐怖などの情動状態を脳が生成する原理、情動状態が脳や体に与える影響の解明などの重要な諸課題の解明を目指す。また本計画では、tFOsによる先天的恐怖情動の誘発技術に加え、全脳活性化マッピン法、多次元情動行動計測法、脳深部自由行動イメージング法などの独創的な先進技術を多様な研究者が持つ課題に適用することも目指す。

 



 

1. Kobayakawa K*, Kobayakawa R*, Matsumoto H, Oka Y, Imai T, Ikawa M, Okabe M, Ikeda T, Itohara S, Kikusui T, Mori K, Sakano H. (*equally contribution) (2007) Innate versus learned odour processing in the mouse olfactory bulb. Nature (Article) 450: 503-508.

2. Matsuo T, Hattori T, Asaba A, Inoue N, Kanomata N, Kikusui T, Kobayakawa R#, Kobayakawa K#. (#corresponding authors) (2015) Genetic dissection of pheromone processing reveals main olfactory system-mediated social behaviors in mice. Proc Natl Acad Sci USA 112: E311-320.

3. Isosaka T, Matsuo T, Yamaguchi T, Funabiki K, Nakanishi S, Kobayakawa R#, Kobayakawa K#. (2015) Htr2a-expressing cells in the central amygdala control the hierarchy between innate and learned fear. (# corresponding authors) Cell 163, 1153-1164.

投稿日:2018年04月23日