神経回路動態制御の基盤技術

小池 康晴(東京工業大学)

「行動と脳の神経活動を結ぶ計算モデル技術」

行動適応を担う神経回路の機能シフト機構を理解するためには、実際の神経活動と行動の間にある複雑な神経回路の構造や環境・身体のダイナミクスを考慮に入れた因果関係を解析できる技術が必須である。筋骨格系モデルは身体運動の基盤であり、神経活動と行動を繋ぐものである。筋骨格系モデルを基にしたデータ解析により、原因と結果を身体のダイナミクスを介して解析することにより、環境との相互作用を含む行動と脳の大規模な神経回路との動的な関係を計算論的モデルを基に定量的に解析する事を目的としている。本研究では、筋骨格系の数理モデル解析技術を、学習や発達の過程での回路の遷移や損傷・障害からの回復の際の回路再編に関与する神経機構を明らかにする研究に応用する。運動指令の情報表現、発現機構、運動計画、運動学習などは全て、運動関連領野だけで無く、体性感覚のフィードバックや環境からの入力情報により計算される。したがって、神経回路の遷移や再編を伴う問題を解決するためには、特定の神経回路を操作して、その影響を脳全体として同時に計測し、解析することが重要になる。脳活動の時空間的解析および筋骨格系モデルを基にした身体性を考慮に入れた因果関係の解析は、グレンジャー因果性の解析などの数値解析に物理的な意味を持たせることになる。筋肉、脊髄など、運動を発生・修飾する器官の情報を用いて大量のデータを解析することで、これまで見いだせなかった内因的な隠れた関係を明らかにする。

本研究では、数理モデルを用いた解析技術を、学習や発達の過程での回路の遷移や損傷・障害からの回復の際の回路再編に関与する神経機構を明らかにする研究に応用する。

行動適応を担う神経回路の機能シフト機構を理解するためには、実際の神経活動と行動の間にある複雑な神経回路の構造や環境・身体のダイナミクスを考慮に入れた因果関係を解析できる技術が必須である。筋骨格系モデルは身体運動の基盤であり、神経活動と行動を繋ぐものである。筋骨格系モデルを基にしたデータ解析により、原因と結果を身体のダイナミクスを介して解析することにより、環境との相互作用を含む行動と脳の大規模な神経回路との動的な関係を計算論的モデルを基に定量的に解析する事を目的としている。

 
最近の主要論文
1. Natsue Yoshimura, Koji Jimura, DaSalla Charles S., Duk Shin, Hiroyuki Kambara, Takashi Hanakawa, Yasuharu Koike. Dissociable neural representations of wrist motor coordinate frames in human motor cortices, NeuroImage, Vol. 97, pp. 53-61, Apr. 2014.
2. Hiroyuki Kambara, Duk Shin, Yasuharu Koike. A computational model for optimal muscle activity considering muscle viscoelasticity in wrist movements, Journal of Neurophysiology, Vol. 109, No. 8, pp. 2145-2160, Apr. 2013.
3. Natsue Yoshimura, Charles S. DaSalla, Takashi Hanakawa, Masa-aki Sato, Yasuharu Koike. Reconstruction of flexor and extensor muscle activities from electroencephalography cortical currents, Neuroimage, Elsevier, Vol. 59, No. 2, pp. 1324-1337, Jan. 2012.

投稿日:2015年04月30日