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平成27年度 「適応回路シフト」研究室滞在支援制度報告

派遣者:井形 秀吉  申請者:佐々木 拓哉(公募班)
    (東京大学 大学院薬学系研究科 薬品作用学教室)
滞在先:船水 章大先生(公募班)
    (沖縄科学技術大学院大学 神経計算ユニット 銅谷賢治研究室)

動物は日々、様々な状況で適切な行動を選びながら生活しています。こうした行動選択の性質を深く調べるために、私たちは、マウスに複雑な空間迷路課題を解かせて、最適な行動戦略をどのように学習するか解析しています。これまでに、課題の初期に多く探索行動をしたマウスほど、その後の学習成績が高いことを見出しました。こうした知見は、多変量の行動データを詳細に解析することで得られますが、同じデータでも、異なった学習理論や数理モデルを取り入れることで、新しい発見に繋がる可能性があります。そこで、本滞在支援制度を活用させていただき、沖縄科学技術大学院大学(OIST)神経計算ユニット(銅谷賢治先生主宰)の公募班・船水章大先生のもとに、2015年11月4日から17日までの2週間滞在し、マウスの行動試験データを用いて、モデルを立てる基礎を学ばせて頂きました。具体的には、マウスが迷路内で実際に通った経路を、強化学習の理論に当てはめて解析することです。マウスの内部パラメータ(報酬の価値など)を可視化したり、モデルとデータとの食い違いを見出すことで、マウスの行動について今までと異なる視点から考察するきっかけを掴むことができました。船水先生曰く、これらの解析結果をきちんと追究すれば、1つの学術論文として十分な研究成果になるとのことです。今後、この支援制度をもとに新しい学術論文が発表できるように、研究を継続していきたいと思います。また、これと併行して、神経細胞の発火パターンと行動を結びつけるベイズ推定の基礎も学ばせていただきました。具体的には、船水先生がこれまでに取得されたトレッドミル上を走るマウスのカルシウムイメージングのデータをもとに、神経細胞群の活動パターンから実際にゴールまでの距離を推定することができました。私たちの研究室でも、自由行動中の動物からマルチユニット記録を行い、多数の神経細胞の活動パターンから、動物の行動を予測するという研究を進めています。OISTで学ばせていただいた研究アイデアは、私たちの今後のデータ解析を進める上で、大いに参考にできることと思います。

最後に、この度の滞在を快く引き受けてくださり、指導に時間を割いていただいた銅谷先生、船水先生をはじめOIST神経計算ユニットの皆様、本支援制度に携わっている先生方に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。


*写真はデータ解析についての議論風景(左、井形。右、船水先生。)。

投稿日:2016年01月06日