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平成28年度 大学院入学式 学長式辞  (平成28年10月3日)

 


本日、福島県立医科大学大学院に入学を許可されました諸君、誠におめでとうございます。

先人の叡智は、困難に直面した時、それを「悪いこと」とは嘆かず、「自らを鍛える良い機会」と捉えて、その困難と斗うことの大切さを説いています。

入学式とは「未来への覚悟」を表明する場です。
人間(ヒト)は、所詮、自分の人生しか生きられません。しかも、人間の一生は短く、限りがあります。
そんななか、君達は、自分の価値観に基づき、覚悟を持って、今、ここに居るのだと、私は確信しています。
今日、新たな一歩を踏み出した君達、本学での出会いを大切にしてください。「遇(あ)うて空しく過ぐる勿れ」です。人生は出会いに尽きます。何故なら、“人生の扉は他人が開く”からです。どの出会いが自分にとって大切かは、その時は分かりません。だからこそ、すべての出会いに真摯に向き合うことです。出会いは、自分を成長させ、そして人生を豊かにしてくれます。

「出会い」に運命的な出会いなどというものはなく、出会った後に、お互いが相手に信頼と敬意を持って接する、長い日々の営みの積み重ねが、絆をつくり、その結果が「掛け替えのない友や恩師」を作っていくのです。

人間というものは、人生が配ってくれたカードでやっていくもので、配られたカードが悪いと愚痴をこぼしたりするものではありません。
これから必ず味わう矛盾や不条理、或いは至らなさ故に招いた自分に不都合な、面白くない事実に直面した時、その原因を世間や他者のせいにしてはいけません。自分を正当化する言動は、君の理解者や支援者を失くしてしまいます。怒り、哀しみ、屈辱、劣等感を自分の裡に受け止めて下さい。その葛藤と上手に折り合い、それらを昇華させる事で、勁さと優しさが育まれていきます。

人生こうしようああしようと計画を立てて、自分の人生を考えても、その通りになることはありません。殆(ほとん)ど違った方向へ行ってしまいます。でも、大切なことは、その場その場で自分のベストを尽くすことです。

私の医師としての経験から、世の中には変わるものも多いが、変わらないものも少なくない、というのが実感です。その中から君達に三つの言葉を贈ります。

一つは「修業とは矛盾に耐えること」です。
自然に四季があるように、人間にも一度きりの四季があります。今の君達は春です。自らを鍛える時です。この時季、世の中の矛盾や不条理に耐えられなければ、君達の夏、医療のプロになった時、一人前にはなれません。修業や人生では、己(おのれ)には納得のいかない事が日々起こります。大切な事は、そこから逃げずに、目の前の小さな事から取り組むことです。
先輩や教師は、君達がひたむきに努力している姿をみると、君達を愛しく思い、教え育(はぐく)もうという熱意を持てるのです。「風を待っている軒下の風鈴」では決して鍛えられません。双方の熱意がぶつかり合って初めて、「人生の扉は他人が開く」という言葉が君達の前に顕れるのです。

もう一つは、「愚直なる継続」です。
過ぎ行く歳月は人間(ヒト)の境遇を変えます。医療のプロとして自らを磨く期間は、君達が今思っている程長くありません。我々が、“時”を自分の味方にする方法は唯一つ、「愚直なる継続」です。これを実行するには鉄のような意志が必要です。何でもよいですから、毎日継続できるものを決めて取り組んでみてください。「愚直なる継続」は、他人とではなく、自分との斗いです。愚直なる継続を貫くには、時には、心に鎧(よろい)を着せて学ぶことも求められます。

最後に、「出来ない理由を考えるより、どうしたら出来るか」という考え方に頭を切り替えることです。
自ら枠を勝手に決めると、それ以上は自分の能力を発揮できません。高い目標を先ず、設定して、それを達成するために、自分にできる全ての努力をそこに集中することです。
枠は作るものではなく、結果として出来るものです。

医療の現場では、寝ている人間を起こしたり、座っている人間を立たせる程の時間は、誰も持っていません。「人生は短いのではなく、実はその多くを浪費しているのだ」という古人の箴言を胸に刻んで、学びの日々を送って下さい。

福島県立医科大学の歴史的な使命に新たな頁(ページ)を書き足すのは、君達自身なのです。大きな可能性を秘めた君達の、今日からの精進を期待しています。

 

 

平成28年 10月 3日
福島県立医科大学 学長  菊地 臣一


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