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到達時間の遅れ

重力レンズ効果によって光源と観測者と結ぶ光路が複数できる(多重効果)。一般 に光路が異なれば,この長さ(光路長)も異なる。従って,同時に光源を 出発した光でも,光路が異なると観測者に到達する時刻が異なる。これが,到達 時間の遅れである。この時間差$\Delta T$の測定値と理論値を比較すると,宇宙 年齢を決める重要な定数であるHubble定数$H_0$を見積もることができる (Refsdal, 1966)。しかし,到達時間の遅れは複数の像の間で光路長が異なる効果 を取り入れただけでは正しく評価することができない。実は,光路が異なるとい うことは,各光路上で光がレンズ天体から受ける重力の影響が異なる,というこ とでもある。この影響は,時計の進み方という形で現れるので,$\Delta T$を大 きく左右することになる(Cooke & Kantowski, 1975)。

先に述べた多重クェーサーQ0957+561A,Bの間でも像の間の到着時間の遅れが観測 されている。像A,B間の時間差は約417日程度と見積もられていて,この時間差か ら$H_0=64\pm13$km/s/Mpc(5)というHubble定数が得られている。 この他にもHubble定数を測定する方法はいくつかあるが,得られている値は $50\sim100$km/s/Mpcとかなり幅がある。これに対して,重力レンズ効果を 使った方法では,他の多重クェーサーの観測からも$60\sim75$km/s/Mpc程度と見 積もられている。


yoshidah
平成17年7月21日