また,図5の(a)と(b)を比較すると,元々の光源と像の大きさが異なっている。 これは,観測される像の明るさと元々の光源の明るさは異なっていることを示し ている。レンズ面上の単位面積当たりの光量(光の密度)は重力レンズ効果がある なしによらないので,元々の光源の明るさも像の明るさもレンズ面上を占める面 積に比例する。従って,レンズ面上での光源の占める面積に対する像の占める面 積の比が,元々の光源の明るさに対する像の明るさの比を与える。これが増光効 果と呼ばれるものである。増光といっても必ずしも像が明るくなるわけではなく, 図5(b)の例では,像Aは元々の光源より明るくなるが,像Bでは暗くなっ ている。
像の多重化や変形・増光効果などの観測データをうまく再現するレンズ天体のモ
デルを構築することで,レンズ天体の質量や質量分布などを見積もることがで
きる。また,このような解析は,暗く見えない物質(ダークマター)がどの位の割
合で銀河の周りに存在するのかを算定する有力な手法として期待されている。