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変形効果と増光効果

図 5: 像の変形と増光
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図5は観測者が望遠鏡を覗いたときの,(a)重力レンズ効果を受けないときのレン ズ天体と光源,(b)重力レンズ効果を受けているときのレンズ天体と現れる像 A(下),B(上)の様子を描いたものである。重力レンズ効果は,光源上の各点から 放出される光に対して,同じように作用するわけではない。レンズ天体の近くを 通る光の方が大きく曲がり,遠くを通る光はあまり曲がらない。即ち,図5(a)で レンズ天体の近くにある光源上の点は,図5(b)では元の位置から大きくずれる。 逆に図5(a)でレンズ天体から離れている光源上の点は,図5(b)では元の位置から のずれが小さい。従って,図5(a)のようなレンズ面上で元々円形をしている 天体でも,レンズ効果を受けると,図5(b)のような歪んだ形に見えることになる。 これが重力レンズ効果による変形効果である。

また,図5の(a)と(b)を比較すると,元々の光源と像の大きさが異なっている。 これは,観測される像の明るさと元々の光源の明るさは異なっていることを示し ている。レンズ面上の単位面積当たりの光量(光の密度)は重力レンズ効果がある なしによらないので,元々の光源の明るさも像の明るさもレンズ面上を占める面 積に比例する。従って,レンズ面上での光源の占める面積に対する像の占める面 積の比が,元々の光源の明るさに対する像の明るさの比を与える。これが増光効 果と呼ばれるものである。増光といっても必ずしも像が明るくなるわけではなく, 図5(b)の例では,像Aは元々の光源より明るくなるが,像Bでは暗くなっ ている。

像の多重化や変形・増光効果などの観測データをうまく再現するレンズ天体のモ デルを構築することで,レンズ天体の質量や質量分布などを見積もることがで きる。また,このような解析は,暗く見えない物質(ダークマター)がどの位の割 合で銀河の周りに存在するのかを算定する有力な手法として期待されている。


yoshidah
平成17年7月21日