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平成29年度 大学院医学研究科入学式 学長式辞 (平成29年10月2日)

   

本日ここに、福島立医科大学大学院医学研究科入学式を挙行できますことは、本学にとってこの上ない慶びであります。
ただいま入学を許可された大学院医学研究科16名の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。

君たちは、医療のプロフェッショナルになるという高い志を実現するために、この福島県立医科大学を選び、今日、ここに集いました。
君たちの志は150年前、他県に先駆け近代西洋医学の導入を目指し、この地に本学の前身である須賀川医学校を設立した先人たちの「崇高なる志」を受け継ぐものです。
ご存知のように、2011年の東日本大震災、原発事故以降、本学は、医科大学の使命である「教育」「研究」「診療」に加え、新たな歴史的使命を負うことになりました。それは将来にわたり継続して県民の健康を見守ること、そして、この災害とその対応のすべてを記録し、学び、次の世代へ伝えていくことです。
すなわち、本学は、不安を抱える県民・国民を支え、この災害と惨禍に対して最前線に立ち続けることを運命づけられた大学と言えるでしょう。
今、私たちが直面しているこの試練は、「過去に例がない」とよく表現されます。しかし、福島の地は過去にも未曽有の災害や惨禍を不屈の精神で乗り越えてきた歴史があります。

さきほども述べましたが、戊辰戦争の戦火の中、傷ついた兵士の治療にあたった医療者たちが、国内でもいち早く、この地に西洋近代医学を導入しました。当時の医術教育機関であった須賀川医学校が本学の前身となったのです。そして、そこで学んだ第1期生のなかには、関東大震災後、壊滅した街の復興を推し進め、現在の東京の礎を作った復興院総裁 後藤新平がいます。さらに1888年(明治21年)の磐梯山大噴火という自然災害に対しても、創立当時の日本赤十字社いわゆる日赤と福島の医療者は協同で敢然と復興に立ち向かいました。
本学の先達は、壮絶な歴史の中で、当時の先端医療を駆使し、災害救護に当たり、街の復興に力を尽くしてきた経験を持っていました。激動の世相の中でも医療の充実と発展に貢献し、優れた医療人の育成、医学の進歩・発展に努めてきたのです。

このように福島と本学の歴史を振り返るとき、本学の先達が目の前の状況を的確に把握し、いかなる過酷な状況に対しても決して折れることのない「しなやかさ」をもって対応していたことが分かります。そうすることで医療者としての知識を得、思考を深めると同時に、人間としての幅を広げていったのです。そして、このことこそ、私たち福島県立医科大学が、世界に誇れる先達から受け継がれてきたDNAすなわち「レジリエンス」です。困難な状況にしなやかに適応して未来を切り開く力です。
※ レジリエンス(困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力)

レジリエンスの根幹は「しなやかさ」です。これから皆さんは、この学び舎で、それぞれの分野でプロフェッショナルになるための厳しい修業に入ります。君たちを指導する先輩から常にいわれる言葉があります。それは、「修行とは矛盾に耐えること」です。そして、医療は、まさにその最前線です。この不条理と矛盾に満ちている医療の最前線において、知識や技術の習得は、医療者の最低限の条件でしかありません。人を思いやる心に満ち、かつ信頼されるだけの良識や人間的な力が必須となります。この不条理と矛盾に満ちている医療の現場でプロを目指す皆さんは、何度も失敗や挫折を経験するでしょう。しかし、精神科医の齋藤茂太先生曰く、「人生に失敗がなければ、人生を失敗します」。これらの試練を、鍛錬の機会ととらえ、本学のDNAである不屈のレジリエンスの精神で、しなやかに対応してください。

震災から6年が経過しました。この間、県や国の支援の下、本学には多くの施設や優秀な人材が集う組織が整えられました。震災前の教職員は約1,900名でしたが、現在3,000名を超えました。誰もが高い志を抱いて、この復興の最前線の医大へ結集しました。本学が様々な面において、「可能性の塊」となったといっても過言ではありません。整備されたこれらの施設や組織を駆使し、最大の成果をあげることを目標とし、我々は、新たな未来の開拓に、不屈の精神でチャレンジする次のステージに入ります。
皆さんも、志をもって、福島へ集まっていただきました。医大の誇るレジリエンスを武器に、その志を実現してください。君たちは我々の希望です。夢や希望を実現しその実績を持って、県や国はもとより、世界でも活躍してください。これが、「福島県立医科大学で学ぶ者、ひとりひとりの使命と心得ること」であると皆さんに伝え、入学式式辞と致します。
諸君の健闘を祈ります。

 

 

平成29年 10月 2日
福島県立医科大学 学長  竹之下 誠一


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