概要
「Familiar(身近なもの)」は慣れ親しんでいるため、危険性があってもあまり危機感を感じにくい傾向があります。一方、「Exotic(奇異なもの)」は未知であるため、警戒心が高まり、Outrageが増します。
例
自然に土壌から発生するラドンは、住宅の地下室に溜まり、肺癌の原因となることが知られていますが、自宅に対しては危機感を持ちにくいです。職場でも同様で、毎日行っている作業に対して危機意識を維持するのは難しく、「過剰な慣れ」が事故の原因となります。
一方で、未知のものに対する警戒心は強く、Outrageが高くなります。例えば、近所に慣れ親しんだ小池で特殊な防護服を着た作業員が見たこともない機材でサンプルを取っていると、住民は不安を感じます。
対応法
身近なものへの慣れによるリスクを克服するためには、常に「危機感」や「恐怖」を維持するよう努める必要があります。しかし、これを実現するのは難しいです。一方、未知のものに対するOutrageを下げるためには、リスクに慣れ親しんでもらう機会を作ることが有効です。例えば、ショッピングモールでの展示、教育カリキュラムへの組み込み、メディアイベントの開催、体験ツアーの組織などが考えられます。
また、リスクについて広報する際は、「一般の人たちを心配させないために、リスクについて話さない方が良い、怖い話はしない方が良い」と考えがちですが、実は逆効果になることが多く、隠さないことが重要です。リスクを身近に感じてもらうことで、不安を減少させることができます。
例
「偶発的な核戦争」とは、誤解や技術的な誤りなどから、意図せずに発生する核戦争のことで、アメリカとソ連の冷戦時代に懸念されました。その「偶発的な核戦争」に関して、国防省がコメントしたとします。
コメント1:
「偶発的な核戦争など起こるわけありません。意図もしないで核のボタンなんて押せません。分析を誤って攻撃してしまうこともあり得ません。皆さん、心配はいりませんよ。」
コメント2:
「偶発的な核戦争については我々も十分懸念しています。よって、そのような事故が起こらぬよう対策チームを配備し、常に間違いが起こらないように徹底しています。その結果、多くの事故や判断ミスは防げていると思っています。ただ、油断は大敵ですので、警戒を怠ることなく継続して対応していきます。」

皆さんが安心できるコメントはどちらですか?(答え:コメント2)
普段、よく耳にしそうなコメントはどちらですか?(答え:コメント1)
まとめ
身近なものに対する過剰な慣れを防ぐためには、危機感を維持する仕組みが必要です。一方、Outrage Managementの観点では、未知のものに対する警戒心を和らげるためには、リスクに慣れ親しむ機会を提供することが有効です。リスクについては隠さずに情報を提供し、リスクに適度に慣れておくことが重要です。
――Link to contents――
Outrage Management
1.自主的 (Voluntary) vs. 強制的 (Coerced)
2.自然のもの (Natural) vs. 人工的なもの (Industrial)
3.身近なもの (Familiar) vs. 奇異なもの (Exotic)
4.悪い想起性がない (Not memorable) vs. 悪い想起性がある (Memorable)
5.恐れられていない (Not dreaded) vs. 恐れられている (Dreaded)
6.慢性的 (Chronic) vs. 破滅的 (Catastrophic)
7.認識可能 (Knowable) vs. 認識不能 (Unknowable)
8.自分がコントロールする (Individually controlled) vs. 他人がコントロールする (Controlled by others)
9.公平 (Fair) vs. 不公平 (Unfair)
10.道徳が関係しない (Morally irrelevant) vs. 道徳が関係する (Morally relevant)
11.信頼できる情報源 (Trustworthy sources) vs. 信頼できない情報源 (Untrustworthy sources)
12.適切な対応 (Responsive process) vs. 不適切な対応 (Unresponsive process)