事業概要

リスクコミュニケーションの効果評価

2011年東日本大震災と福島第一原子力発電所事故(原発事故)以降、リスクコミュニケーションの重要性が増しています。リスクコミュニケーションの目的は、実施者によって多様です。また、リスクコミュニケーションにおいて、目的の達成を評価するための指標も多様であると考えられるます。これまで、リスクコミュニケーションの効果を評価する指標は、十分に整理されてきていません。

本研究では、リスコミュニケーションの効果を評価する指標の整理・体系化を実施し、それらを指標に基づいた効果評価を実施し、その有用性を検証します。具体的には、下記の3つの研究を行います。

1. 効果指標の文献レビューとリスクコミュニケーターへのインタビュー

第一に、リスクコミュニケーションの効果の評価指標に関する文献レビューを実施します。原発事故に限らず、リスクコミュニケーション全般について効果の評価指標に関する文献について、系統レビューを行います。ここでは、定量性に特に着目しながら、取り上げる指標を整理して網羅的にまとめることを目指します。さらに、原発事故後にリスクコミュニケーションを実践してきたコミュニケーターを対象に、リスクコミュニケーションの目的や効果指標についてインタビューを行います。

2. 保健師への出前講座と効果評価

本事業に関わる多くの研究者は、2011年から現在までに福島県内保健師への出前講座を多数行ってきました。これは、保健師が地域住民の健康を守りながら、住民と行政、専門家の橋渡しを行うリスクコミュニケーターの役割を担っているといった考えによるものです。本研究では、上述の効果指標のレビューを踏まえてアップデートした出前講座を実施し、その前後と1か月後にアンケート調査を実施します。ここでは、効果指標のレビューに基づいて抽出された効果指標を活用します。これによって、事故後8年間の出前講座の蓄積による福島県内保健師のリスクコミュニケーション能力の育成効果、今回新たに行う出前講座による能力向上の効果を、育成を進めながら検証することができます。 また、県内全域の保健師にもアンケートを郵送し、これまでの出前講座への参加の有無を尋ね、住民との健康リスクに関する対話と協働に関する能力の向上効果を測定します。

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3. 住民対象アンケートと効果評価

リスクコミュニケーションが被災経験への認識の形成にどのように作用し、被災者における心理的苦痛の軽減や地域内交流の向上につながったかを評価します。特に、原発事故後において被災経験の認識と心理的苦痛の軽減、地域内交流の関連に着目して評価します。