<気管支喘息などの慢性咳嗽の検査>
長引く咳や息切れを訴えて呼吸器科外来を受診される方は非常に多いです。そのような症状が出る疾患に咳喘息や気管支喘息があります。喘息の病態は気道の慢性炎症が特徴です。気道炎症の状態や程度を評価する方法には様々な検査があり、当科では主に下記のような検査を行って診療しています。
【呼気一酸化窒素濃度(Fractional exhaled nitric oxide:FeNO)測定】
気管支喘息患者さんの多くは好酸球性気道炎症があり、FeNOを測定することで、好酸球性気道炎症の存在や程度を評価することができます。専用のマウスピースを加えて、一定の強さと速さで10秒ほど息を呼出することで測定します。負担が少なく、結果はその場ですぐに判定できます。気管支喘息の迅速補助診断に加えて、治療効果や管理の指標としても用いています。保険収載されている検査となります。
【気道過敏性検査(アストグラフ)】
気道過敏性とは、気道収縮物質に対して気道が狭窄反応を示す程度のことであり、気管支喘息患者さんでは気道過敏性の亢進が認められることが特徴です。気道収縮薬(メサコリン)を低濃度から1分間ずつ吸入し、段々と薬剤濃度を上げていき、気道抵抗値を測定します。測定時間は10分~15分程度です。気管支喘息の診断指標として重要ですが、負荷試験であることから施行時には過度の気道狭窄や低酸素血症に注意が必要です。また、アストグラフ検査の終盤には気管支喘息の治療に用いる気管拡張薬(ベネトリン)を用いて検査前の呼吸機能に回復したことを確認したうで検査を終了します。
【気道抵抗測定(Forced oscillation technique:FOT)】
主に気管支喘息患者さんでの末梢気道(気道の奥の方)の気道抵抗値を測定します。計測時間は5分程度です。気管支喘息では末梢気道の抵抗が上昇することがあり、気管支喘息の評価のひとつとしての検査となります。
【咳感受性試験】
咳が出る原因のひとつに咳感受性が亢進していることがあります。カプサイシン(唐辛子に含まれる成分)を低濃度から少しずつ吸入して、どの濃度で1分間に2回または5回以上、咳が誘発されるのかを評価する検査です。カプサイシン濃度が低い段階で咳が誘発される場合には、咳感受性が亢進している可能性があり、咳の治療薬を考える際に有用となることがあります。
【咳モニター】
咳が1日の中でどのくらい、そしてどの時間に多く出ているのかを評価するための検査です。記録はボイスレコーダーを用いて行います。ご自宅に専用レコーダーを持ち帰っていただき、24時間の記録を行ったのち、後日返却していただきます。咳の解析は専用プログラムを用いて咳だけを自動的に検出し、咳の回数と咳の出ている時間帯を調べます。専用プログラムによる解析なので、プライバシーも保護されています。咳の程度や多い時間帯をみることができるため、慢性咳嗽疾患の診断の一助になります。また、解析結果をカルテ画面にお示しすることも可能なので、患者様自身が客観的に咳の状態を把握できます。更に、治療前と治療後に咳の回数を評価することで,どのくらい改善したのかを把握することも可能です。
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