呼吸器の重要な部分をになう肺は、生命にとって欠くことのできない酸素の取り入れと二酸化炭素の排泄を司る臓器です。その最大の特徴は、ガス交換機能を果たすため常に外気を吸込みそれを吐き出していなければならない宿命を持っていることです。
このため肺は、環境変化に最も敏感な臓器です。たとえば、癌死亡の第一位になった肺癌は、喫煙習慣や大気汚染といった環境要因に大きく影響を受けています。また、ここ20年で約3倍に増加したといわれる成人気管支喘息の多くが生活環境内に存在する種々の抗原に暴露されることにより発症します。この抗原に対する抗体産生は、基本的に遺伝子レベルの個人差(体質)の影響を大きく受けますが、同時に大気汚染などの環境要因によっても影響を受けます。最近では、季節風にのって中国の砂漠からやってくる黄砂も症状に関係することが分かってきました。 |