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【論文】視床-線条体路における学習や経験に伴う行動の選択と切り替えを担う脳機能に関する発見

本研究部門講師の加藤博士の論文がCell Reports誌に掲載されました!


Action selection and flexible switching controlled by the intralaminar thalamic neurons

Shigeki Kato, Ryoji Fukabori, Kayo Nishizawa, Kana Okada, Nozomu Yoshioka, Masateru Sugawara, Yuko Maejima, Kenju Shimomura, Masahiro Okamoto, Satoshi Eifuku, and Kazuto Kobayashi

Cell Reports 22: 2370-2382 (2018), doi: 10.1016/j.celrep.2018.02.016

 

【研究の要点】
・ 視床髄板内核-線条体路は、選択行動および行動切り替えにおける柔軟性をコントロールしていることを発見した。
・ 視床髄板内核を構成する外側中心核と束傍核から線条体への入力は、異なる学習過程においてその役割を示し、学習に伴う回路のネットワークが遷移することを見出した。
・ パーキンソン病等の脳神経疾患の発症や病態機序の解明および治療薬の開発に結び付くものと期待される。

【研究概要】

 経験や学習に基づく新たな行動の獲得や様々な環境の変化に対する迅速な行動の切り替えは複雑な神経ネットワークの相互作用によって、運動・記憶・学習として連合するのに重要な役割を果たすと考えられているが、その仕組みはほとんどわかっていない。本研究では、これまで主に痛覚を媒介して、感覚機能の制御に関わると理解されている視床髄板内核に注目し、これを構成する外側中心核 (CL)から線条体への神経連絡を選択的に除去および機能抑制することで、その行動生理学的意義を調べた。視覚弁別課題では学習実行過程における正答率の低下と反応時間の有意な遅延を認め、本経路が刺激に基づく正しい行動選択を促進していることを明らかにした。また、逆転学習課題およびルール変更課題では、速やかに行動選択を切り替える柔軟性が障害されることを見出した。我々のグループでは、以前視床髄板内核の異なる核である束傍核 (PF)-線条体路が学習の獲得および実行過程に重要な役割を果たすことを報告しており、このことは同じ視床髄板内核でもそれぞれが異なる学習過程を時期特異的に制御しながら回路のネットワークシフトに関わることを示唆した。さらに、視床髄板内核はパーキンソン病において部分的な変性が生じることが報告されており、この神経機能が明らかになったことで病態やその機序の理解が進むことが期待されると共に、新たな治療戦略や薬剤の開発に結び付くことが望まれる。