お知らせ

本部門開発の遺伝子導入ベクターが新学術領域の共同研究に活用されました(2016年1月)

 2016年1月14日、新学術領域「行動適応を担う脳神経回路の機能シフト機構」の計画研究班で自然科学研究機構生理学研究所の伊佐先生と、名古屋市立大学の飛田先生との共同研究の成果が発表されました。この研究では本研究部門で開発した遺伝子導入ベクターが活用されています。

 

 発表された論文は、脳出血を起こしたラットの運動機能の障害とリハビリによる回復の仕組みを明らかにしています。ラットの運動の信号は大脳皮質の運動をつかさどる領野から脊髄に伝播していきます。一部は脳幹の赤核という場所で中継されます。

 運動の信号が通る場所で脳出血を起こしたラットでは肢の麻痺が起こります。大脳皮質の運動をつかさどる領域においては肢の運動に関係する神経活動が見られなくなります。この脳出血を起こしたラットに集中的なリハビリを行わせ、運動機能を回復させた結果、神経活動が再び活性化されることが分かりました。解析の結果、この活性化は運動をつかさどる皮質から赤核へ投射する神経活動に由来することが分かりました。

 リハビリ後の皮質から赤核への神経活動の亢進と運動機能の回復の関係を明らかにするために、本研究部門が開発した遺伝子導入ベクターを使用して検証を行いました。この遺伝子導入ベクターで皮質から赤核への投射を選択的に抑制したところ、リハビリによる機能回復効果が消失してしまいました。

 これらの結果から、リハビリによって回復した機能は、皮質から赤核に投射する神経活動に由来することが明らかになりました。