研究室ブログ

【加藤さんの留学記】 Bostonより - 2 –

2015.1.13

早いもので渡米生活が3ヶ月目に入りました。こちらは高緯度のため冬場は太陽が低いし、日出は遅く日没は早いです。日照時間が短いので鬱っぽくなる人が多いそうです。寒さはかなり厳しく、先週は-18℃を記録しました。肌を出している部分が痛くなります。しかし、海が近いからか雪はそれほど降っていません。降ってもすぐに道路には塩が撒かれて雪は溶けちゃいます。その塩のせいで道路も車も真っ白になっています。

 

実験の方は、研究所内の別の研究室で分子生物実験と細胞培養をさせてもらいなんとかウイルスベクターの作製を開始しました。研究所内ではレンチを作っているラボは多く、一方でAAVはたくさんのラボで使っているにも関わらず、作っているラボはどうやら皆無のようです。AAVは購入するものという感覚です。レンチよりもAAVの方がよっぽど作るのが楽だと思いますけど…

 レンチの精製は、多くがスクロース密度勾配遠心をするかあるいは精製なしで動物に注入しているようです。僕もそれに習って精製をこれから開始するところです。十分な力価が出たら、こちらのラボで狙っている神経路にそのウイルスを打って組織解析。標識経路の機能操作はoptogeneticsがワークしているので、遺伝子標識さえうまくいけばあとはシステムに乗っかるだけです。

 一方で、電気生理の準備も少し手伝っています。テトロード電極とボルタンメトリーの組み合わせで行動実験中の生体内のドーパミンをモニターしようとしています。根本的に原理とかわかっていないことが多いので、それを習いつつ今は電極、動物の頭に固定するヘッドステージ作りなどを少しずつやっています。色々と勝手が違うけど、いつか役立つ時が来るかもしれません。

 研究室では概ねの生活サイクルができました。ラボメンバーとも交流しながら日々を過ごしています。まだ言葉の壁はありますけど、1対1での会話なら何とかなります。大勢での会話だとフォローできないことも多々ありますが…怯まずに、英語から逃げないで向き合おうと開き直ることが大事かもしれません。文法とか時制とかそんなの気にしないで勢いで頑張ると相手がこちらの意図を察してくれます。それにばかり頼っていると、いつまでも上達しなそうですけど。まずは意思疎通ができるようになってきたという実感を持てることが次へのステップにつながっているのかなと思います。

 

 (写真1) Molecular room 基本的な分子生物学実験はこの部屋を使わせてもらっています。最近部屋替えをしていて、新しい機器が入ってくるし、別のラボの人が行動実験と電気生理をするために一部の部屋を使ったりしています。


(写真1) Molecular room
基本的な分子生物学実験はこの部屋を使わせてもらっています。最近部屋替えをしていて、新しい機器が入ってくるし、別のラボの人が行動実験と電気生理をするために一部の部屋を使ったりしています。

 

(写真2) Cell culture room 細胞培養はこちらの部屋を使わせてもらっています。Hoodが2つありますが、Hoodを使う人は主に1人しかいないので、僕がもう1つを使わせてもらっています。現在2つのうち1つのincubatorが故障中で、僕が大量培養するとかなり手狭です。この部屋の入り口には超遠心機もあります。

(写真2) Cell culture room
細胞培養はこちらの部屋を使わせてもらっています。Hoodが2つありますが、Hoodを使う人は主に1人しかいないので、僕がもう1つを使わせてもらっています。現在2つのうち1つのincubatorが故障中で、僕が大量培養するとかなり手狭です。この部屋の入り口には超遠心機もあります。

 

(写真3) Fabrication room Ann labは電気生理に特化していて、工作室はかなり充実しています。電極はみなさん自作なのでこの部屋に籠って細かい作業をしています。この部屋でできない工作はないんじゃないかというくらい何でも揃っているそうです。

(写真3) Fabrication room
Ann labは電気生理に特化していて、工作室はかなり充実しています。電極はみなさん自作なのでこの部屋に籠って細かい作業をしています。この部屋でできない工作はないんじゃないかというくらい何でも揃っているそうです。

 

 (写真4) Physiology room この写真はほんの一部ですが、電気生理のための機器とPC、そしてたくさんのコード、奥にはラット用のT-mazeがあります。ここで電気刺激をしつつ行動解析して、さらにはモノアミン(主にドーパミン)を計測しています。


(写真4) Physiology room
この写真はほんの一部ですが、電気生理のための機器とPC、そしてたくさんのコード、奥にはラット用のT-mazeがあります。ここで電気刺激をしつつ行動解析して、さらにはモノアミン(主にドーパミン)を計測しています。

 

ラボメンバーは殆どの人がとても真面目です。アメリカのラボでは昼頃来て夕方には帰っていく人も多いと聞くけど、この部屋ではそういう人はいません。それぞれが目の前のやるべきことを次々と見つけてAnnとdiscussionしながら真摯にサイエンスに向き合っているように思います。また、とても多国籍な集団なのでそれぞれのメンバーが持つ文化や考えを知ることができるのも貴重な経験です。

 前回、車がなくても困らないところに住んでいると記しましたが、車があるのとないのではやはり大違いです。中古のおっさんカーを購入して、あちこち走り回っています。

 

 (写真5) National Museum of Natural History, NY 巨大な恐竜が出迎えてくれる博物館です。入館料は寄付のため自分の意思で支払います。それなのに推奨額($22)が書かれていて、いくら払うか聞かれ、推奨額以下だとわざとらしく聞き返されます。


(写真5) National Museum of Natural History, NY
巨大な恐竜が出迎えてくれる博物館です。入館料は寄付のため自分の意思で支払います。それなのに推奨額($22)が書かれていて、いくら払うか聞かれ、推奨額以下だとわざとらしく聞き返されます。

 

(写真6) Times Square, NY 日本と違い、アメリカではWinter holidayはクリスマスがピークで、年越しは静かに過ごすところが多いのですが、ここだけは違いました。年末のTimes Squareはcrazyな人がたくさん。

(写真6) Times Square, NY
日本と違い、アメリカではWinter holidayはクリスマスがピークで、年越しは静かに過ごすところが多いのですが、ここだけは違いました。年末のTimes Squareはcrazyな人がたくさん。

 

(写真7) Lincoln Memorial, DC リンカーン像は思ったよりも大きく、荘厳な雰囲気に包まれていました。この地は多くのアメリカ人が大好きな場所として挙げるそうです。大晦日の日だったけど、観光客らしき人で溢れていました。

(写真7) Lincoln Memorial, DC
リンカーン像は思ったよりも大きく、荘厳な雰囲気に包まれていました。この地は多くのアメリカ人が大好きな場所として挙げるそうです。大晦日の日だったけど、観光客らしき人で溢れていました。

 

 (写真8) Washington Monument, DC リンカーン像の180度真後ろに位置するワシントン記念塔。そのすぐ近くには、ホワイトハウスもあります。SfNでDCに来た時には遠くから眺めただけでしたけど、近くで見ると感じ方も違います。


(写真8) Washington Monument, DC
リンカーン像の180度真後ろに位置するワシントン記念塔。そのすぐ近くには、ホワイトハウスもあります。SfNでDCに来た時には遠くから眺めただけでしたけど、近くで見ると感じ方も違います。

 

 

※サイト管理者より……原稿を頂いてからアップロードするまでに時間がかかってしまったことをお詫びいたします。