基盤研究部門では、放射性薬剤製造用のホットラボを5システム保有しています。GMP対応が可能なラボもあります。また、小型・中型の2台のサイクロトロンを保有しており、11C、13N、15O、18F、68GaなどのPET診断に用いる陽電子放出核種の他、近年、核医学治療用のアルファ線放出核種として注目されるアスタチン-211(211At)も製造できており、様々な放射性薬剤の製造・合成を行っています。一部は臨床応用に提供し、その他は動物評価を用いて診断用または治療用薬剤の開発研究を進めています。
基盤研究部門では、画像診断や核医学治療(RI内用療法)に用いる放射性薬剤の製造および研究開発を行うため、放射性核種を生産するためのサイクロトロンを2台導入しました(小型HM-20 、中型MP-30)。
小型サイクロトロンで生産した放射性核種から製造される放射性薬剤は、ブドウ糖代謝をイメージングする18F-フルオロデオキシグルコース(18F-FDG)や心筋血流をイメージングする13N-アンモニア、脳血流・酸素代謝・血液量をイメージングする15OガスPET検査を日常診療に提供しています。
また、臨床研究としてアルツハイマー型認知症の原因物質と言われているβ-アミロイドをイメージングする11C-PiBや心血管系の不安定プラークのイメージング剤として期待される18F-NaFを製造しています。その他、研究推進のため、新しいPET用標識薬剤の開発研究(動物実験用)にも供給されています。
一方、中型サイクロトロンは30MeVのα粒子(ヘリウム原子核)を加速する性能を有し、半減期7.2時間のα線放出核種211Atを製造することができます。近年、α線放出核種を用いた核医学治療(RI内用療法)の有効性が注目されていることから、有用な211At標識治療薬(211At-MABGなど)のファースト・イン・ヒューマン試験を目指した研究開発に利用されています。
200を超えるアイソレーション式飼育ケージを備え、施設全域をSPF化した高度な細胞・動物実験を実施可能な環境が整備されています。検疫室も有しているため、特殊な疾患動物や遺伝子組み換え動物の飼育・実験も実施可能です。最新の小動物用PET/SPECT/CT装置、発光・蛍光イメージング装置、小動物用MRI装置、オートラジオグラフィ(ARG)装置、病理組織学的標本の作製・画像解析装置等を備えるとともに、種々の放射線測定・分析器や細胞分離、蛋白定量測定・分析器、小動物血球測定器、血液生化学測定器等を有し高精度な測定が可能です。(設備の一覧はこちら)
PET/SPECTイメージングを用いた放射性標識化合物の薬物動態・薬効薬理試験や生体機能の解明、PET/SPECT/CTイメージングや発光・蛍光イメージング、小動物用MRIイメージングによる疾患モデル動物の代謝・機能評価、インビボイメージングによる治療効果・予後予測の評価、211At標識放射性治療薬を用いた新たな内用療法の開発を実施しています。
現在、悪性褐色細胞腫の治療薬として期待される211At-MABGのファースト・イン・ヒューマン試験に向けて精力的に取り組んでいます。