教室紹介
主任教授ごあいさつ

当講座は「放射線災害医療」を看板に掲げる本邦初の医学部臨床系講座です。2011年3月に発生した東日本大震災と福島第一原子力発電所事故、そこで露見した課題を抽出・検討・改善し、広く国際社会に伝えるため2014年10月に新たに設立されました。
2025年4月現在の講座構成員は、医師2名、事務担当1名、大学院生3名と、問屋制家内工業所のような小所帯です。しかし、各人がサブスペシャリティーを生かして、勢力的に診療・教育・研究に取り組んでいます。過去8年間のうち、当講座の卒業生が大学院専攻長賞を3回獲得しているのはその一つの現れと思います。
当講座の業務においては、狭義の救急・災害医療はもちろん、社会心理学、予防医学、WHO, IAEA, ICRP等の国際機関との連携が求められるため、多様な考え方を受容し、相手のフレームを理解する努力が出来る能力とともに、自らの考えをももち、バランス良く組織の進む方向を定めることの出来る能力が求められます。
原子力災害医療は救急・災害・緊急被ばく医療領域の応用医療、並びに医療・福祉・保健領域にまたがる危機対応医学であり、未だ確立されていない未知の部分が多く残るやりがいのある領域です。それらを体系化し確立する意欲を持った、開拓精神旺盛な皆さんのお越しを、医局員一同心から歓迎いたします。
医療活動
放射線災害医療とは、一般救急医療、緊急被ばく医療、災害医療の三つの視点から事態を判断し、臨機応変に対応する、新しい応用医学分野です。その領域は狭義の医療にとどまらず、要支援者への福祉、住民への保健など広範にわたります。災害亜急性期以降の医療は、まさに究極の地域医療にほかなりません。日常は一般救急診療に携わる一方で、東日本大震災で露見した種々の課題を抽出・改善して、それを広く国際社会に還元する使命をもちます。
研究活動
東日本大震災と福島第一原子力発電所事故で露見した課題を抽出し、広く国際社会に還元するために、国内外の医科学、産業技術、環境、社会学関連組織と連携して、医療・保健・福祉に関連した種々の研究を行っています。
このうち、長崎大学・福島県立医科大学共同大学院 災害・被ばく医療科学共同専攻(修士課程)では「放射線災害医療学」を開講し14名の卒業生を輩出しています(うち3名は年間最優秀論文賞受賞)。医学部博士課程では「放射線災害医療学」を開講しています。
研究の具体的な内容は多岐にわたりますが、研究の結果が原子力災害医療に従事する人材育成に関連する内容が中心です。詳細は研究費取得状況等をご覧下さい。
教育・啓発活動
救急・災害・緊急被ばく医療領域の応用医療、並びに医療・福祉・保健領域にまたがる危機対応医学、を確立し体系化することを目標に活動しています。科学的根拠に基づくEvidence basedな内容は勿論のこと、福島事故の経験と反省を踏まえたNarrative basedな内容もバランスよく含み合わせた、当学ならではの教育啓発活動を目標としています。
学内・院内の学生や職員のみならず、広く国内外の教育・行政機関向けに教育・啓発活動を行っております。
授業・実習やセミナーでは、参加者の皆様に主体的に関わって頂けるように、意見交換の時間に加えて、webを介した双方向性コミュニケーションツール、PC上でアバターを操作する実習ソフトウエアなどを用います。
現在、以下の学外機関・施設と定期的に教育・啓発活動の連携を行っています。
講義・実習・セミナー等の受託・連携施設(定期連携の施設のみ)
- 長崎大学医学部
- 産業医科大学
- 山梨大学医学部
- 東北医科薬科大学
- 防衛医科大学校
- 広島大学大学院
- 山形大学大学院
- 原子力災害医療研修(原子力規制庁主管)
2025年4月