研究紹介・実績
研究活動
レベル7の原発事故後、多くの災害医療支援活動により、緊急被ばく医療の体制が構築されました。福島第一原発では今なお、多くの作業員などが被ばくのリスクを抱えており、今後も緊急被ばく医療体制の充実が必須です。緊急被ばく医療に関わる科学的な研究に加えて、人的、技術的ネットワークの構築と人材育成を、救命救急センターや放射線科とともに、さらには県や国などの行政とも協力して行います(福島医大病院 放射線災害医療センター)。
環境中の放射性物質による低線量被ばくが長期に続く福島においては、長期間の健康フォローアップが必要であり、そのため県民健康調査事業が開始されています。本調査への人的支援、学術的アドバイスを行うとともに、低線量被ばくの健康障害に関する疫学調査を行い、多くの環境因子、遺伝子などの内在因子との関連も明らかにする必要があると考えています。具体的には初期から長期にわたる外部被ばくと内部被ばく線量評価を、学術的評価に耐えられるように行うことと、健康影響を科学的に評価できるようにするため、甲状腺検診、こころの健康と生活習慣病調査、一般健診調査、妊産婦調査を支援しています。そのために国際機関や海外の研究者とも協力・連携して、これらの調査が県民の皆様に真に役立つような、科学的妥当性をもったものになるよう努力しています。放射線健康リスクをご心配されている方々に対するコールセンターを介した電話相談、放射線健康相談外来における診療、検診も行っています。将来的には健康リスク影響の評価が、個人個人の疾患の予防や早期発見につながる研究をめざしています。
放射線による健康リスクについての考え方を、住民の方々及び医療従事者と共有するための、リスクコミュニケーションにも積極的に関わっています。今回の大震災と原子力災害からの復興に向けては、多種多様な考えの方々ができるだけ共通の認識で、地域ごとの特性を生かしながら、少しずつ前進してゆくことが必要だと感じています。教室の医師らも、これまで経験していた臨床医学の世界とは異なる世界ではありますが、このような社会医学活動に現在積極的に取り組んでいます。