雪の日に思うこと

雪が積もった木々と地面が広がる冬の風景。
〜芭蕉〜

うっすらと雪が積もった。

雪国の人々は冬の気配を感じ始める11月ごろから何故か心が落ち着かなくなる。ああまた今年も冬が来る、タイヤを交換しなくてはならない、農家では雪囲いをしなくてはならない、などと心が忙しなくなるのだ。

そうして迎える雪の朝、不思議と心が穏やかになった自分に気がつく。

もう冬は来ていたのだと。

人生も少しこれに似ているのかもしれない、獏とした不安を抱え日々を過ごすが常。忙しなく日々を繰り返す。そしていつか死を間近に感じたとき、案外心が穏やかになるのかもしれない。もう、人生は満ちたのだと。

できれば日々の暮らしのなかで、時折このような落ち着きを持ちたいと思うが、容易ではない。

ただ、我々医療人は患者を前にこのような人びとの心の移り変わりを感じることが肝要だ。

初雪や 水仙の葉の たわむまで

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