公募研究

宋 文杰(熊本大学)

「学習による大脳皮質異モダリティー応答獲得の神経機構に関する研究」

認知には多感覚統合が重要な役割を果たしている。従来、多感覚統合は大脳皮質連合野で行われていると考えられてきたが、近年、初期の感覚野も異種のモダリティーの刺激に、弱いながら、反応を示し、多感覚統合において何等かの役割を果たしていると提案されるようになってきている。一方、多感覚情報統合能力は、経験や学習によって得られたものと考えられる。これまで、多様な異なる感覚モダリティーの連合学習は、げっ歯類から霊長類までの哺乳類のみならず、下等動物においても示されてきており、脳における感覚モダリティーを連合させる仕組みが広く一般的に存在することが考えられる。しかし、その実態の全体像が依然明らかになっていない。本研究では、げっ歯類をモデル動物に用いて、異モダリティー感覚の連合学習の神経基盤を探究する。これまで、私たちはげっ歯類において、一次視覚野に聴覚応答が見られることや(Nishimura & Song, 2012)、一次聴覚野や聴覚周辺野に体性感覚応答が見られることを示して生きた(Nishimura et al., 2015)。従って、一次感覚野も多モダリティー感覚連合学習の責任部位である可能性が考えられる。本研究では、一次野を含む大脳皮質聴覚野に主眼を置いて、視覚刺激と聴覚刺激の連合学習において、それが果たす役割を行動学的な手法と生理学的な手法で探索することを研究目的としている。げっ歯類の聴覚野領野構成は明らかになってきているので(Sawatari et al., 2011; Takemoto et al., 2014)、連合学習における各領野の役割の探索も視野に入れて、研究を進める計画である。

 

 
最近の主要論文
1. Nishimura M, Song W-J (2014) Greenwood frequency-position relationship in the primary auditory cortex in guinea pigs. NeuroImage 89:181-191.
2. Takemoto M, Hasegawa K, Nishimura M, Song W-J (2014) The insular auditory field receives input from the lemniscal subdivision of the auditory thalamus in mice. J Comp Neurol 522:1373–1389.
3. Nishimura M, Song W-J (2012) Temporal sequence of visuo-auditory interaction in multiple areas of the guinea pig visual cortex. PLoS One 7(9): e46339.
4. Lu M-H, Takemoto M, Watanabe K, Luo H, Nishimura M, Yano M, Tomimoto H, Okazaki T, Oike Y, Song W-J (2012) Deficiency of sphingomyelin synthase-1 but not sphingomyelin synthase-2 causes hearing impairments in mice. J Physiol 590(Pt 16):4029-44.

投稿日:2015年12月20日