公募研究

山下 俊英(大阪大学)

「随意運動神経回路の機能シフト」

本研究では、中枢随意運動回路の可塑性を制御する機構を明らかにすることを目的とする。私たちはこれまでの研究で、中枢神経損傷後に、運動機能を制御する皮質脊髄路が、損傷を免れた軸索から頚髄のレベルで側枝を形成し、interneuronsに新たな回路を形成することを明らかにした。さらに運動神経回路の再編成現象を明確に評価するin vivoのシステムを確立し、神経回路の可塑性制御に関わる分子を同定した。以上の研究から、皮質脊髄路がどのように末梢神経に至る経路を形成できるのかという疑問に一部答えることができた。そこで本研究では、脳障害後の神経回路修復モデルを用いて、随意運動神経回路の可塑性を制御するメカニズムの解明を行う。皮質脊髄路の上位および下位を包括して、随意運動システムがどのように可塑的変化を遂げるかという課題に対して、統合的にアプローチする。またリハビリテーションが可塑性に与える影響及びその分子機構を明らかにする。具体的には私たちの構築したモデルにより、皮質脊髄路の軸索枝が頚髄で、対側に伸長し、目的の介在ニューロンとシナプスを形成し、その後に不要な軸索枝が刈り込みを受けるという3つの可塑性プロセスに分けて、各メカニズムを解析する。In vivoにおいて随意運動回路を制御する分子機構を明らかにすることで、成体における神経回路再編成のメカニズムを解明することを到達目標とする。得られた成果を応用し、皮質脊髄路の可塑性を誘導するメカニズムを強めることで、運動機能障害を効果的に改善させる分子標的を見いだすことを最終目標とする。私たちはこれまでに一貫して中枢神経障害後の機能再生に関する研究を続けてきており、これまでの成果を土台として本研究を進めていきたい。

 

 
最近の主要論文
1. Fujita, Y., et al. (2017) Cohesin regulates formation of neuronal networks in the brain. J. Exp. Med. In press.

2. Fujitani, M., et al. (2017) A chromosome 16p13.11 microduplication causes hyperactivity through dysregulation of miR-484/protocadherin-19 signaling. Mol. Psychiatry 22, 364-374.

3. Siebold, C., et al. (2017) RGMs: Structural Insights, Molecular Regulation and Downstream Signaling. Trends Cell Biol. In press.

4. Hayano, Y., et al. (2016) Dorsal horn interneuron-derived Netrin-4 contributes to spinal sensitization in chronic pain via Unc5B. J. Exp. Med. 213, 2949-2966

投稿日:2017年05月08日