公募研究

小山内 実(東北大学)

「qAIM-MRI による大脳皮質-基底核-視床ループの神経回路シフト解析法の確立」

定量的活動依存性マンガン造影 MRI (qAIM-MRI) とは、神経活動に伴い細胞内濃度を変化させる Ca2+ の代わりに、あらかじめ投与しておいた Mn2+ 濃度の変化を MRI で定量的に計測する全脳神経活動イメージング法である。この qAIM-MRI を用いて、パーキンソン病の病態と相関した神経活動の変化を呈する領域を同定することで大脳皮質―基底核-視床ループの機能解明を目指す。加えて qAIM-MRI を種々の疾患モデル動物および学習・記憶による神経回路シフト解析に適用しうるよう改良を行い、新たな神経回路シフト解析法として発展させる。

神経疾患、学習などによる神経回路シフトが脳のどの領域でどの程度起こっているのかを捉えるためには、全脳の神経活動を定量的に計測する必要がある。そこで本研究では、in vivo 神経活動計測法として代表者が確立した定量的活動依存性マンガン造影 MRI (quantitative AIM-MRI: qAIM-MRI) を用い以下の研究を行う: (1) qAIM-MRI による in vivo 全脳神経活動計測をパーキンソン病モデル動物に適用することにより、パーキンソン病の病態と相関した神経活動変化を呈する部位を同定する。(2) 学習・記憶の過程などにおける神経回路のダイナミックな機能シフトを解析しうる汎用 qAIM-MRI を開発する。(3) (1)(2) で神経活動の変化を認めた領域に対して in vitro Ca2+ イメージングを行い神経回路シフトの発現メカニズムを明らかにする。図に示すように、qAIM-MRI は自由行動下での神経活動の履歴を計測することができるため、種々の疾患モデル動物および学習・記憶による神経回路シフト解析に適した神経活動計測法である。これにより、大脳基底核の機能解明を目指すと共に、記憶・学習や障害による神経回路の機能シフトを定量化することができる汎用qAIM-MRI 法を開発し、種々の神経回路シフトの定量的解析に資する方法論を確立する。

 

 
最近の主要論文
1. Kikuta S, Nakamura Y, Yamamura Y, Tamura A, Homma N, Yanagawa Y, Tamura H, Kasahara J, Osanai M. Quantitative activation-induced manganese-enhanced MRI reveals severity of Parkinson’s disease in mice. Scientific Reports 5: 12800, 2015.

2. Tamura A, Yamada N, Yaguchi Y, Machida Y, Mori I, Osanai M. Both neurons and astrocytes exhibited tetrodotoxin-resistant metabotropic glutamate receptor-dependent spontaneous slow Ca2+ oscillations in striatum. PLoS ONE 9(1):e85351, 2014.

3. Osanai M, Suzuki T, Tamura A, Yonemura T, Mori I, Yanagawa Y, Yawo H, Mushiake H. Development of a micro-imaging probe for functional brain imaging. Neuroscience Research 75: 46-52, 2013.

投稿日:2017年05月07日