放射線災害医療センター関連論文のご紹介

放射線災害医療センターの構成員が主著者として専門誌に掲載された関連論文についてご紹介いたします。

タイトル

Individual external dose monitoring of all citizens of Date City by passive dosimeter 5 to 51 months after the Fukushima NPP accident (series): II. Prediction of lifetime additional effective dose and evaluating the effect of decontamination on individual dose

東京電力福島第一原子力発電所事故後5ヶ月から51ヶ月までに伊達市が行った市民の個人外部被ばく線量測定:(その2)生涯追加線量の予測と除染の影響評価

筆頭著者、連絡・責任著者

福島県立医科大学放射線健康管理学講座 宮崎真(代表)

共同著者、連絡著者

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 早野龍五

掲載誌

「Journal of Radiological Protection 37 (2017) 623-634」

背景と目的

福島県伊達市が2011年8月から継続してきたガラスバッジによる市民の個人の外部被ばく線量(以下「個人線量」)測定の結果を解析した第1論文(Journal of Radiological Protection 37 (2017) 1-12)は、以下の2点を明らかにしました。

上記のうち2)は、航空機モニタリングにより測定された空間線量率と、同時期に行われたガラスバッジ測定による個人線量が、等しい速さで減少していることを示しています。この事実をもとに、第2論文となる本論文では次の3点について検討することを目的としました。

方法

放射線事故で放出され地面に降下した放射性物質による空間線量率は、放射性物質の物理的な減衰と、ウェザリングと呼ばれる風雨による流れ出しや土中への染みこみといった環境の要因が組み合わさって下がっていきます。

我々は1)の検討として、伊達市における航空機モニタリング測定値の経時的な変化をもとに、ウェザリングの効果を含む空間線量率の時間変化の関数を求めました。

2)の検討として、将来の追加積算個人線量(論文では事故後70年まで)を予測するため、検討1)で求めた関数を用いて空間線量率から個人線量を経時的に推定した結果を積算し、実測されたガラスバッジの結果を個々に積算した線量の分布と比較しました。

3)の検討として、除染の効果をみるため、環境省の除染ガイドラインと同じ除染方法がとられたとされる地域(Aエリア)の中で、除染時期がほぼ同じ住居の住民のうち継続してガラスバッジを持っていた方々の個人線量測定の結果をもとに、除染が個人線量および追加積算線量の分布(※)にどう影響したかを調べました。

※除染の効果は個々の状況により個別に異なるかもしれませんが、論文では個別の効果ではなく、対象地域で行われた面的除染が個人線量および追加積算線量の分布「全体」にどう影響したかを評価しています。

結果

解析の結果、以下の3点が明らかになりました。

まとめ

この論文の解析手法は、大規模な汚染を伴う放射線事故の際、継続的な航空機モニタリングと適切な個人モニタリングを組み合わせることで、その地域に住みつづける住民の積算線量分布の推定に役立つと考えます。

論文へのリンク(オープンアクセス)

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