FUKUSHIMAいのちの最前線
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428スタッフの連携で乗り越えた地震・放射能汚染の二重被害3か月後にマグニチュード8.6の余震が発生している。今回の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)のマグニチュードは9.0であったので、今後、それに近い巨大余震の発生も否定できない。関係者の英知を集積した防災対策が必要であることはいうまでもない。 動物施設では他からの人的支援や物的支援を受けることなく、どうにか難局を切り抜けることができた。最上階(4階)の機械室での損壊を受けたものの、福島医大の実験動物施設が地震規模のわりには比較的軽微な被害ですんだのは、「備え(対策)」を講じてきた成果だと考えている(表5)。表5 被害を少なくしたと考えられるこれまでの留意事頂①過去の地震体験を契機に、阪神・淡路大震災における神戸大学の被災報告を参考にして動物施設内での地震対策について種々検討し、マニュアル化していた。②感染事故防止の目的で空調系統数を多くし、さらに空調機を各階に分散配置していたことが地震にも有利であった。③飼育架台やラック類はキャスター付きのものとし、壁面固定は転倒防止程度としていた。④2010年以降、マウスケージは架台から落下しにくいカードケージに変更していた。⑤滅菌済みのケージ類やステンレス蓋は、台車に積載して保管していた。⑥固形飼料の在庫量が1か月分程度あった。⑦床敷材や日常使用する消耗物品類、消毒剤(消毒用エタノールは2週間分程度)の在庫量が2か月分程度あった。⑧弱酸性水(ソフト水)製造装置を1階と3階に分散して設置していた。⑨給水瓶に充水しやすいように、限外濾過装置を設置していた(写真12)。⑩感染防止と水漏れによるリスク低減のために、マウスの飼育はすべて給水瓶を使用していた(写真8)。⑪保温や床敷の代用材として、綿花やキムタオルを相当量滅菌して保管することにしていた(写真13)。⑫すべての飼育室や実験室に常備する懐中電灯の電池交換を、毎年4月の第1週に行っていた。⑬職員はじめ、委託要員スタッフの高い意識と技術力、日頃のチームワークによる職務遂行。写真15 ケージ類の一時保管のための台車の活用。地震時には台車が動くので、ケージの落下や散乱が少ない。写真16 ラットの飼育にはステンレスエレクターシェルフ(キャスター付き)をダブルにして使用。震度5強の揺れでもケージの落下はなかった。写真17 地震に強いクリーンラックのL字配置

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