FUKUSHIMAいのちの最前線
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264甲状腺検査における検査結果と今後の課題や方向性について 超音波は探触子(プローブ)を頸部にあてれば比較的容易に画像を得ることは可能である。しかし、検者によって描出されるものが異なり、検者の熟練が必要となる。また、超音波機器の進歩により、1㎜程度の結節まで描出可能である。以前は、超音波は存在診断として使用され、結節などの病変を見つけたらすべて専門医に紹介し穿刺吸引細胞診を行い、数㎜の微小癌も多数切除されることがあったが、最近では、存在診断のみならず質的診断も行い、細胞診を施行しなくともある程度診断が可能となってきている。乳腺のように触知しないような小さな癌を発見することが生存率に寄与する可能性があるものと異なり、甲状腺では剖検時に最大36%の潜在癌(ラテント癌)が存在しそのほとんどが10㎜以下のいわゆる微小癌であることから5)、あまり小さいものを検索し切除することを目的とはしていない。 県民健康管理調査は平成23年7月より実施され、まずは問診票による基本調査が開始された。詳細調査としての甲状腺検査は、同年10月9日より11月13日までの土日・祝日に、福島県立医科大学附属病院にて開始された。対象は飯舘村、浪江町、川俣町山木屋地区の約4,000名であり、うち3,765名が希望され本検査が施行された。その後、11月14日から12月16日までの月から金曜までの平日に川俣町、南相馬市で出張検査を行った。山木屋以外の川俣町、南相馬市それぞれ、1,977人、8,700人で計10,677名の検査を施行した。昨年末までに合計で14,442名となった。 平成24年1月から本年3月23日までに残りの国指定の避難区域等である、伊達市、田村市、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、葛尾村の28,099名(平成23年11月21日現在、県内市町村居住者22,614名、県外避難者5,485名)につき実施し、伊達市10,274名、田村市6,180名、その他の避難地域の7,218名を実施し合計では38,114名、対象者47,766名中であり実施率は79.8%になった(表1)。検査実施者の県内、県外居住については、飯舘、川俣、伊達、田村では県外居住者は少なく、南相馬、浪江、その他の避難地域では県外からの検査希望者が22-33%と多かった。 年齢別内訳を見ても、それぞれの実施率は0-5歳77.5%、6-10歳84.9%、11-15歳84.5%、16歳以上68.7%と学校での実施の多かった小中学校生の6-15歳での実施率が最も高く、また当初専門家でも検査遂行が危ぶまれていた0-5歳の乳幼児も80%近い実施率で、全員実施可能であった。 一次検査の結果通知は、複数の専門医による画像判定委員会を実施し、確認の後郵送で通知している。結果はA、B、Cの三段階に分け、B、C判定は二次検査が必要となる。A判定には所見のなかったA1と5㎜以下の結節や20㎜以下の嚢胞を認めたA2がある。A1、A2は初回は2年半後、その後は20歳までは2年後、それ以降は5年後の再検査受診を勧める。充実性部分を伴っているものは結節として扱っており、ここでの嚢胞とは良性と判断されるものであり、20.1㎜を超えるものはそろそろ圧迫症状などが出現する可能性があり、二次検査にて穿刺吸引する場合も考慮し、二次検査としている。5㎜以下の結節は嚢胞と区別のつかないものが多く超音波所見上良性と判断されているものである。A2判定の結節はB、C判定と共に全例画像の再判定を行い、2年半後の再検査では不十分と判断された場合にはB判定にし、二次検査を勧めるようにしている。従って、A2判定に関しては、通常の診療では特にコメントすらされないような所見であり2年半後の再検査で十分早期発見ができるレベルにとどまっているものと考えている。しかし、今回は長きにわたり甲状腺の状態を把握していただく意味合いからもこれらの所見も通知しそれぞれの特徴として認識していただくことが重要と考えている。セカンドオピニオンを求めるなどのご心配を出来るだけ少なくするために、当初から全国から集まった多数の専門医による一次検査に加え専門医による再判定委員会も実施したうえでの結果報告であることをご理解いただきたい。 B、C判定はいわゆる要精検であり、C判定は直ちに二次検査が必要と判断されるものであり、逆に言うとB判定は緊急性はなく、再検査が2年半では間隔が長いと思われる方を対象としているものであり、採血、採尿とともに精密な超音波検査を再度施行し、基準に合致した場合には穿刺吸引細胞診を施行し良悪性の鑑別を行う。従って、超音波検査を施行しても細胞診まで至らないケースも多くあることが予想される。 それぞれの結果によって、A判定と同様に2年半後の超音波検診をうける方と、数ヶ月から1年後の再検査等の経過観察を勧められる方、さらには細胞診を繰り返したり、手術等の治療が必要になる方に分かれることが考えられる。一次検査の実施状況一次検査の結果通知

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