<肺癌の発生>
<肺癌の疫学>
肺癌の死亡数は1999年の統計では約5万人といわれています(全ての癌による死亡数は約30万人といわれています.).男女比では3:1で男性に多いのが特徴ですが,近年では女性の肺癌も増加しております.男性では癌死亡の第一位が肺癌であり,女性でも胃がんに次いで第二位となっております.
<肺癌の分類>
細胞または組織型による分類
肺癌はその細胞形態および組織構築の違いから,大きく小細胞肺癌と非小細胞肺癌に分けられます.小細胞肺癌は約20%程度,残りの80%は非小細胞肺癌です.
非小細胞肺癌はさらに扁平上皮癌,腺癌,大細胞癌....その他に分けることができます.
進行度による分類
肺癌はその進行度から見て,IA期からIV期まで7段階に分けることができます.
進行度を決める因子として,腫瘍の状態(大きさ,発生部位,周囲組織への浸潤程度)
リンパ節転移の状況,遠隔転移の有無があり,それぞれの組み合わせによって,進行度が決定されます.以下に大まかな進行度の基準を示します.
IA期;腫瘍径が3cm以下でリンパ節転移,遠隔転移のないもの
IB期;腫瘍径は3cm以上だが,リンパ節転移がなく,遠隔転移もないもの.
IIA期;腫瘍径は3cm以下で第一群リンパ節に転移を認めるが遠隔転移のないもの.
IIB期;腫瘍が3cmを超え,第一群リンパ節転移を認めるもの,リンパ節転移はないが腫
瘍が周囲組織に浸潤するもの.
IIIA期;縦隔リンパ節転移を認めるが遠隔転移のないもの
IIIB期;反対側のリンパ節に転移を認めるもの.または大血管など重要臓器に浸潤するもの.遠隔転移はない.
IV期;腫瘍の状態,リンパ節転移の有無に関わらず,遠隔転移(脳,骨,肝臓など)を認めるもの.
<肺癌の症状>
肺癌の症状として特有なものはありません.
咳や痰(血痰)は有名ですが,早期の肺癌でこのような症状を呈するものはむしろ稀です.また腰痛や背部痛(骨転移),頭痛,麻痺(脳転移)といった遠隔転移による症状が前面に出る場合も少なくありません.その他の症状としては癌が肺尖部(肺のてっぺん)に浸潤し肩の痛みや上肢のしびれなどで発症する例(パンコースト症候群),癌が大血管(上大静脈)を圧迫もしくは浸潤して,顔面や上肢のむくみが出るもの(上大静脈症候群),癌が各種ホルモンを産生して症状を出すものもあり注意が必要です.
また非常に稀ですが,癌によって筋無力様症状を呈するもの(Lambert-Eaton 症候群)などもあります.
<肺癌の診断法>
肺癌の診断には上記のような症状だけでは診断することは難しいので以下に記すような各種診断法を組み合わせて行います.
1.胸部X線写真;検診や外来初診時に行われる一般的な検査で各種検査に先立ち行われるべき検査です.しかし,早期肺癌などの診断においては十分とはいえません.
2.CT検査;コンピュターを使いX線画像を処理して断層撮影を可能にしたものです.肺癌の診断において中心的です.腫瘍の大きさ,部位,周囲組織への浸潤程度,リンパ節転移の予測などにおいて有用です.
3.気管支鏡;CTなどの画像において肺癌が疑われる場合に確定診断をつける際必須の検査です.口から細いファイバーを入れ,腫瘍の近くまでこれを誘導し,先から細い鉗子などを使って細胞を採取することができ,腫瘍の細胞,組織学的診断が可能です.
4.CTガイド下肺生検;気管支鏡では診断のつけにくい末梢型の腫瘍に対し,CTを見ながら体の外から皮膚を通して針を刺し細胞を採取するものです.
5.PET検査;正確にはFDG−PET検査といい,腫瘍の生化学的な特性(悪性度の高い腫瘍は糖の代謝が正常組織に比べ活発であることを利用し,腫瘍の質的診断(癌かどうかの診断)をするものです.比較的新しい技術で,今後さらに広まっていく検査法と思われます.
<肺癌の治療法>
肺癌の治療はいくつかの治療法を組み合わせて行う集学的治療が一般的です.
治療の大きな柱は手術,抗癌剤(化学療法),放射線の3つです.
また小細胞肺癌と非小細胞肺癌では治療法がやや異なります.
小細胞肺癌に対する治療
限局型小細胞型肺癌;放射線と抗癌剤の組み合わせによる治療.ごく一部の症例では手術の適応となる場合があります.
進展型小細胞肺癌;化学療法
非小細胞肺癌に対する治療
IA期-IIIA期の一部;手術を中心に何らかの化学療法を組み合わせる.
IIIA期-IIIB期;化学療法と放射線が中心となる.ごく一部の症例に対してのみ手術が行われる.
IV期;化学療法が中心
以上はあくまでも目安となる治療法であり,患者様の状態や癌の状態により個々に治療法が決められていきます.
またいまだ臨床研究の域は出ませんが,免疫療法といったオプションもあります.