骨シンチ

腫瘍・炎症シンチ

甲状腺シンチ

脳血流シンチ

心筋シンチ


主な核医学の検査を説明します。


骨シンチグラフィ

使用RI

99mTc-HMDP、99mTc-MDP

原理

肘静脈内に投与された薬品の、骨に取り込まれる機構の全容は明らかではないが、骨親和性物質の集積増加がみられる病変部には血量の増加がある事が知られている。また、陰イオンとしての性質を有することから、骨の hydroxyapatite 結晶にイオン結合することにより、骨、ことに骨新生の盛んな部分に多く集まるものと考えれている。

検査方法

370MBq〜740MBq を肘静脈内に注射し、2〜3時間後に被検部の骨シンチグラムを得る。

前処置

検査直前に排尿。

臨床

  • 転移性骨腫瘍の診断(悪性腫瘍の骨転移巣検出率は95%以上と高い、前立腺、乳癌、肺癌、神経芽細胞腫などによる骨転移)
  • 原発性骨腫瘍の診断
  • 骨折、スポーツ外傷の診断
  • 急性骨髄炎の診断(X線写真よりも早く検出可能である。)
  • 関節炎の診断
  • 骨移植の評価
  • 軟部組織の病巣検出(横紋筋融解症,皮膚筋炎,脳梗塞,急性心筋梗塞)
99mTc-HMDP wholebody 骨転移の一例


腫瘍・炎症シンチグラフィ

使用RI

67Ga-citrate(クエン酸ガリウム)、201TlCl(塩化タリウム)

原理

67Ga-citrateの悪性腫瘍への集積機序については明確な解明はされていない。静注された67Ga-citrateは血中のトランスフェリンと結合し、腫瘍細胞のトランスフェリンレセプターに作用し、細胞内に取り込まれる。細胞内では、ライソゾームをはじめ細胞質に分布するが、この一部は67Ga-フェリチンとして、また大部分は microvesicles や粗面小胞体に運ばれ、そこで腫瘍細胞の機能に必須な高分子タンパクと結合する。また67Ga-citrateは悪性腫瘍に限らず良性腫瘍や炎症部位にも集積することから炎症シンチグラムとして使用されることもある。その炎症巣への集積機序については明らかではないが、多核白血球と結合し炎症巣への遊走、血流の分布増加などが関与するのではないかといわれている。67Ga-citrateは急性期にも集積するが特に慢性期の炎症部に集積する。一方、201TlClの悪性腫瘍への集積機序については、TlとKは生物学的に類似性を有し、腫瘍に多く含まれるKとNa-K-ATPase系によってTlが置換すると考えられている。

検査方法

  • 67Ga-citrate  静脈注射後2〜3日後に被検部の腫瘍または炎症シンチグラムを得る。
  • 201TlCl     静脈注射後5〜10分後より腫瘍または炎症シンチグラムを得る。必要に応じ、注射後約3時間に撮像を行う。

前処置

  • 67Ga-citrate  検査前絶食、高圧浣腸。
  • 201TlCl     検査前絶食。

臨床

  • 67Ga-citrate(悪性腫瘍の診断)
    悪性リンパ腫、肺腫瘍、甲状腺未分化癌(但し、分化癌への集積は低い)、原発性肝癌(集積率は80〜90%と高い)、悪性黒色腫、上顎癌(陽性率は高い)や上咽頭(上記の疾患での陽性率は70%以上といわれる。しかし、未分化淋を除く甲状腺癌、胃癌、大腸癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌での陽性率は低い。)
  • 67Ga-citrate(良性腫瘍の診断)
    肝、腎、後腹部、横隔膜下などの膿瘍、肺炎、サイコイドーシス、尿路系炎症、心筋炎
  • 67Ga-citrate(炎症の診断)
    原因不明熱の感染巣、炎症巣の活動性の評価、急性骨髄炎、慢性骨髄炎再熱期の診断、術後感染巣の検索、腎移植後の急性拒絶反応のスクリーニング、クローン病
  • 201TlCl(悪性腫瘍の診断)
    脳腫瘍、甲状腺の悪性・良性の鑑別、甲状腺癌術後の残存病巣、再発病巣の検出、肺腫瘍、縦隔腫瘍、 骨・軟部腫瘍(特に悪性度の高い骨肉腫などに有用)
67Ga-citrate wholebody
201TlCl wholebody
67Ga-citrate SPECT による coronal 像 67Ga-citrate SPECT による MIP 像


甲状腺シンチグラフィ

使用RI

123I、201TlCl、99mTcO4

原理

甲状腺は血中の無機ヨードを捕獲し、これを有機化して甲状腺ホルモン(T3:トリヨードサイロニン、T4:サイロキシン)を合成し血中に分泌する。この捕獲・有機化の性質を利用したのが、Na123IやNa131Iによる甲状腺シンチグラムである。201TlClはKと類似の生体内挙動を示し、Na-Kポンプにより細胞内に取り込まれ、血流量に依存して細胞内分布を示すことがよく知られている。一方、99mTcO4については同様に甲状腺に捕獲されるがIマイナスイオンと異なり有機化されずに血中に放出されるため、単に捕獲能のみを反映する。

検査方法

  • 123
    経口投与(カプセル)。投与後5時間おいてから甲状腺摂取率およびシンチグラムを得る。
  • 201TlCl
    静脈注射直後シンチグラムを得る。注射後約1時間にもう一度シンチグラムを得る。 
  • 99mTcO4
    静脈注射後15分後にシンチグラムを得る。

前処置

  • 123
    ヨード制限食(海草などヨウ素を含むものは禁忌)
  • 201TlCl、99mTcO4
    特になし
臨床
  • 123
    甲状腺の形態診断、異所性甲状腺の診断、甲状腺腫瘍の診断、甲状腺重量の算出。
  • 201TlCl
    甲状腺の悪性・良性の鑑別、甲状腺癌術後の残存病巣、再発病巣の検出。
  • 99mTcO4
    甲状腺機能亢進症、び慢性甲状腺腫、甲状腺腫瘍など。


脳血流シンチグラフィ

使用RI

123I-IMP、99mTc-HMPAO、99mTc-ECD

123I-IMP

原理

脳への集積機序は、脳内での血管内/脳実質組織のpH勾配、脂質/水分配係数並びに脳及び脳内毛細血管内膜に局在する相対的非特異的な高容量アミン結合部位への親和性などの作用が複合しているであろうといわれている。123I-IMPを静脈内に投与すると、脳血管内の123I-IMPは血液脳関門を通過し、初回循環で約90%以上が脳組織内に取り込まれ、15〜30分でプラトーに達し、その後1時間程度は安定した分布状態を保持する。Acetazolamide(Diamox)による負荷、ARG法等により定量を行うこともある。

99mTc-HMPAO

原理

静脈内に投与された99mTc-HMPAOは血液脳関門を通過し、脳内で速やかに脂溶性物質から水溶性物質に変化して脳組織内に留まる。脳組織への集積は1〜2分で最高となり、少し減少した後2〜3分でプラトーに達し、以降8〜10時間は一定の分布を示す。99mTc-HMPAOは123I-IMPに比べて、自施設での標識が可能なことから救急時に使用できる、標識時の99mTcO4活性量を調整することで投与量を増やせるため短時間での撮像が可能である、短時間負荷の検査が安静時に引き続き行える、などの長所を有する。一方欠点としては健常部と虚血部のコントラストが劣る、再分布現象の観察ができない、などが挙げられる。

99mTc-ECD

原理

99mTc-ECDはエステル基を導入したdiamine-dithiol化合物で、容易に血液脳関門を通過し脳実施に摂取され、脳内のエストラーゼにより加水分解されて水溶性化合物に変わり、血液脳関門での透過性を失い脳実質に保持される。その脳内分布は投与2分後より1時間程度までほぼ一定であるが、3時間以降少し分布に変化が見られる。亜急性期の脳梗塞例でしばしば見られるぜいたく灌流(luxuryper-fusion)の現象で、99mTc-HMPAOや123I-IMPの取り込みが増加していても99mTc-ECDは欠損像として描出される。99mTc-HMPAOとは脳局所でクリアランスの程度に差があり、小脳で速く、基底核や視床では遅く洗い出される。

検査方法
  • 123I-IMP
    静脈注射後25分(定量の時は10分後に動脈より採血)よりシンチグラムを得る。
  • 99mTc-HMPAO、99mTc-ECD
    静脈注射後30分以上おいてからシンチグラムを得る。
前処置
  • 123I-IMP
    甲状腺ブロック
  • 99mTc-HMPAO、99mTc-ECD
    とくになし。
臨床
  • 123I-IMP
    モヤモヤ病の診断・SLE患者の脳血流状態の把握・アルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆との鑑別動静脈奇形,早期像と遅延像(再分布現象が見られる)
  • 99mTc-HMPAO、99mTc-ECD
    脳梗塞(急性期・慢性期)の診断、一過性脳虚血発作(TIA)の診断、脳動脈閉塞および狭窄の診断、クモ膜下出血の診断、モヤモヤ病の診断、SLE患者の脳血流状態の把握、脳挫傷。
123I-IMP による脳血流シンチグラフィ


心筋シンチグラフィ

使用RI

99mTc-TF、99mTc-MIBI、201TlCl、123I-MIBG等

原理

99mTc-TFと99mTc-MIBIの体内挙動はとよく類似するといわれ、冠動脈血流によって心筋の各部に運ばれて受動拡散により心筋細胞に取り込まれ、冠血流量に比例した分布状態を示す。201TlClのような再分布現象は見られないことからwashoutrateの算出は不可能である。201TlはK(カリウム)と類似の生体内挙動を示し、Na-Kポンプにより初回の冠動脈循環で約80%が心筋細胞内に取り込まれ、その分布は局所の心筋血流を表す。123I-MIBGはノルエピネフリンと類似の構造を有し、心筋の交感神経末梢に取り込まれることから、そのMIBG像は交感神経機能を反映するといわれる。また、これらの薬剤の他に急性心筋梗塞における梗塞部位の描出に99mTc-PYP、心筋の脂肪酸代謝が評価できる123I- BMIPPなどがある。

検査方法
  • 99mTc-TF、99mTc-MIBI
    負荷中に静脈注射。30分後よりシンチグラムを得る。午後より安静時にてもう一度静脈注射。30分後よりシンチグラムを得る。
  • 201TlCl
    負荷中に静脈注射。10分後よりシンチグラムを得る。3〜4時間後に安静時のシンチグラムを得る。
  • 123I-MIBG
    安静時にて静脈注射。20分後よりシンチグラムを得る。3〜4時間後にもう一度シンチグラムを得る。
前処置
  • 99mTc-TF、99mTc-MIBI
    とくになし。
  • 201TlCl、123I-MIBG
    食事制限。(朝軽食、昼絶食)
臨床

心筋梗塞の診断・虚血性病変部位の鑑別、経皮的冠動脈形成術(PTCA)や冠動脈内血栓溶解療法(PTCR)の治療効果の判定、心筋炎、心筋症などの心筋障害の判定

99mTc-TF SPECT による心筋シンチグラフィ
201TlCl SPECT による WASH OUT RATE の算出
QGS(quantitative gated SPECT)

心電図を同期させて心筋SPECTを行うと左室の壁運動の観察、左室駆出率、左室容積などがわかる。(マウスをあてると動きます。)

心筋シンチグラフィによる虚血性心疾患の評価

安静時の心筋画像は梗塞部位やその拡がりの診断に有効で欠損像として表される。しかし、冠動脈の狭窄からくる局所的な虚血の部分において正常の血流分布を示すことから正常か虚血かの判断は難しい。(一般には90%以上の狭窄がなければ安静時の心筋灌流血流異常は描出されないといわれている)。そこで、運動負荷や薬剤(ジピリダモール)負荷することで、その狭窄した部分は相対的な局所血流低下により欠損像となる。そして、負荷後の時間経過と共に血流が回復(再分布して正常化)し、正常、虚血あるいは梗塞との鑑別が可能となる。

負荷時
安静時
正常
正常
正常
狭心症
欠損
正常
心筋梗塞
欠損
欠損

201TlCl SPECT 心筋シンチグラフィ
負荷時
安静時
下壁部が再分布している。