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レンズ方程式

前節で述べたように,一般相対性理論によると光は時空に沿った最短の光路を伝 播する。光路は滑らかな曲線となるが,実際にこのような曲線を扱うのは非 常に難しい。幸いレンズ天体による重力が比較的弱い場合(ブラックホールのよ うな天体でない限り)では,この曲線は折れ線で近似できる。この近 似から得られる方程式が,重力レンズ効果での基本方程式である「レンズ方 程式」である。

図 1: 観測者,光源,レンズ天体の位置関係
\includegraphics[width=0.9\textwidth]{fig1.eps}

図 2: 光源面への射影図
\includegraphics[width=0.5\textwidth]{fig2.eps}
図1のように観測者と光源の間にレンズ天体があるとする。観測者-レンズ天体 間,観測者-光源間,レンズ天体-光源間の距離をそれぞれ $D_\mathrm{OL},
D_\mathrm{OS}, D_\mathrm{LS}$とする。 また,レンズ天体を含み視線方向に対して垂直な平面をレンズ面,光源を含み視 線方向に対して垂直な平面を光源面と名付ける。本来重力レンズ効果を受けなけ れば,光源はレンズ天体に対して $\vec{\theta}_\mathrm{S}$の角度(実際の観測 では知ることができないのだが)に見える筈である。しかし,レンズ天体の重力 によって光路がレンズ面で角度$\vec{\alpha}$だけ曲がるので,レ ンズ天体に対して $\vec{\theta}_\mathrm{I}$の角度のところに光源の像が観測 される。この様子を観測者から光源面へ射影したのが図2である。ここで, $\vec{r}_\mathrm{I}=D_\mathrm{OS}\vec{\theta}_\mathrm{I}$ $\vec{r}_\mathrm{S}=D_\mathrm{OS}\vec{\theta}_\mathrm{S}$はそれぞれ光源 面に射影したレンズ天体に対する像と光源の位置である。 $\vec{r}_\mathrm{S}$ $\vec{r}_\mathrm{I}$の差がレンズ効果によって光路が曲げられた結果で $D_\mathrm{LS}\vec{\alpha}$である。すなわち, $
\vec{r}_\mathrm{S}-\vec{r}_\mathrm{I}=-D_\mathrm{LS}\vec{\alpha}
$の関係が得られる。一般に,光の曲がり角$\vec{\alpha}$は光がレンズ面のど こを通るのかによってきまる。従って,$\vec{\alpha}$ $\vec{\theta}_\mathrm{I}$の関数で与えられる。先の式の $\vec{r}_\mathrm{I}$を右辺に移項して,両辺を$D_\mathrm{OS}$で割ったもの が,所謂「レンズ方程式」である:
\begin{displaymath}
\vec{\theta}_\mathrm{S}=\vec{\theta}_\mathrm{I}
-{D_\mathrm{LS}\over D_\mathrm{OS}}\vec{\alpha}(\vec{\theta}_\mathrm{I}).
\end{displaymath} (1)



yoshidah
平成17年7月21日