どんな患者さんのための手術?
心臓を養う冠動脈に動脈硬化があるために、心臓の血液不足がおきて胸が痛くなったり(狭心症)心臓の筋肉が死んでしまったり(心筋梗塞)した方のための手術です。動脈硬化で狭くなった部分をカテーテルで広げる(バルーン療法、カテーテルインターベンション)治療が内科でまずおこなわれますが、カテーテル治療の効果が少ない場合や危険な場合があり、その時は内科のドクターから冠動脈バイパス術をすすめられる事があります。  具体的には、

1.左冠動脈主幹部病変(冠動脈の根元の太い部分)
2.3枝病変(3本の冠動脈に狭窄がある)
3.心筋梗塞を起こした後で心機能が不良
4.バルーンが通らない冠動脈狭窄
5.バルーン療法をしても再狭窄をくりかえす場合などです。

手術の内容は?
冠動脈が狭窄している部分を治すのではなく、狭窄の先に自分の血管(バイパス血管)をつないで、心臓へ行く血液を増やす手術です。
バイパス血管には、肋骨の血管(内胸動脈)、腕の血管(橈骨動脈)、胃の血管(胃大網動脈)、足の血管(大伏在静脈)などがあります。 手術には、人工心肺を使って一時的に心臓を止めて行う手術(人工心肺使用心停止下冠動脈バイパス術)と、人工心肺を使わず心臓が拍動したままおこなう手術(心拍動下冠動脈バイパス術:OPCAB=オプキャブともいいます)があります。
当院では、人工心肺による合併症が少なく患者さんの回復が早いという理由から、全ての患者さんに心拍動下冠動脈バイパス術を施行しています。

治療の効果は?
心臓に流れる血液が増えるために、

1.胸痛がなくなる
2.心臓の機能が良くなる
   (息切れがなくなる、長い距離を歩けるようになる、など)
3.心筋梗塞が予防出来る(冠動脈の狭窄部分が詰まってしまっても、
  バイパス血管が流れているために心臓へは十分な血液が流れます)
4.心筋梗塞(死亡率20%)が予防できるので、
  手術を受けなかった方とくらべて長生きできます
5.生活の質が良くなります(旅行、スポーツ、仕事など手術前よりも
   活発にできるようになります)

手術の成功率は?
2007年の日本全体の統計では成功率99%です。当院の最近(〜2008年3月)の400例では、成功率99.4%です。他の臓器に病気(脳硬塞、腎不全、動脈瘤など)があったり、高齢になるほど手術のリスクは増加します。
 当院では全ての患者さんに体への負担が少ない心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)を行い、高齢の方や他の合併症(低左心機能、低肺機能、腎不全、脳動脈硬化症など)を持っている方にも全て対応しています。

手術の合併症は?
一番の問題は脳硬塞です。発生率は1〜2%(当院は1%)ですが、後遺症(麻痺など)が残る危険があります。脳硬塞の原因は完全には判明していませんが、高齢(脳血管にも動脈硬化があることが多い)や手術方法(大動脈の操作)なども一因とされています。  その他、術後不整脈(発生率10%)や手術創の感染(発生率5%)などで入院が長引くことがあります。

入院から退院までの治療内容と期間は?
心臓カテーテル検査が済んでいれば、手術前2〜4日に入院し手術前の検査をおこない、手術後10日から2週間で退院できます。手術は3〜5時間かかり、手術の後はICU(集中治療室)に一泊します。手術翌日の午後には病棟に戻り、食事を開始することができます。術後2〜4日には病棟を歩けます。術後7〜10日に抜糸をおこない、CT検査でバイパス血管の流れを確認した後退院できます。術後のカテーテル検査は行いません。最近の入院日数は10〜20日です。

退院後の通院は?
原則として紹介元の内科に通院します。交通の便などの理由で、近くの循環器内科専門医に紹介し通院していただくこともあります。

手術後の生活で注意することは?
仕事は?:体力の回復度によりますが、60代より若い方であれば1〜2週間後には職場復帰可能です。
手術の傷は?:完全に傷がかたまるのは2〜3ヵ月かかります。普通に入浴してください。傷の痛み、腫れ、赤みなどが見られたらすぐ来院してください。
手術の効果を長もちさせるには?:狭心症/心筋梗塞の原因は冠動脈の動脈硬化です。動脈硬化の原因は、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満などの生活習慣病です。ですから、通院している内科のドクターと良く相談して生活習慣病をコントロールすることが、手術後の動脈硬化の進行と再発を予防する最も大事な点です。「一病息災」でより健康的な生活を送られることを願っております。

冠動脈バイパス手術の最近の進歩は?
幹細胞移植による血管新生療法:バイパスできる血管がないほど冠動脈硬化がすすんだ患者さんに対して、骨髄の幹細胞を移植して心臓の血管再生を計っています(2002年〜)
OPCABの技術が進歩し、小さな傷での手術(MIDCAB等)、手術危険率の高い再手術、動脈瘤(人工血管置換術またはステント手術)との合併手術も安全におこなわれるようになりました。

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