研究成果情報・学会等表彰 (学会等表彰)

第13回インテリジェント・コスモス 奨励賞 〔平成26年5月受賞〕

「受精の膜融合メカニズムの解明」

井上 直和 ( いのうえ・なおかず )

福島県立医科大学 医学部附属生体情報伝達研究所
細胞科学研究部門 准教授

今回の受賞について

「インテリジェント・コスモス奨励賞」は、公益財団法人インテリジェント・コスモス学術振興財団(宮城県仙台市)が、東北インテリジェント・コスモス構想 の一環として、広く学術振興を図るために、科学技術分野において独創的で優れた研究テーマを持つ、将来有望な若手研究者 に対し授与する賞です。
東北7県の大学等に所属している40歳(医歯薬系は42歳)以下の若手研究者を対象としており、平成14年度から実施されています。

これまで本学では、平成18年度に細胞科学研究部門 初沢清隆 助教授 (現鳥取大学教授)、平成20年度に解剖・組織学講座 亀高 諭 講師(現名古屋大学教授)、平成22年度に腎臓高血圧・糖尿病内分泌内科学講座 谷田部淳一博士研究員、平成23年度に生化学講座 苅谷慶喜 学内講師、平成24年度に生体機能研究部門 加藤成樹 講師が受賞しています。(所属・職階は受賞当時のものです)
今年度は10名の受賞者が選ばれ、5月19日に授与式が仙台市にて行われました。本学からは細胞科学研究部門の井上直和 准教授と微生物学講座の生田和史 講師が選ばれました。また井上准教授は受賞者代表挨拶を行いました。

〔関連サイト〕
(公財)インテリジェント・コスモス学術振興財団 (http://www.icr-eq.co.jp/zaidan/)

 受賞研究概要

受精の際の精子と卵子の膜融合は、射出された大量の精子のなかで過酷な生存競争に生き残ったごく僅かな精子のみが起こす現象であるため、そこには種を超えて共通する、精緻で確実な仕組みが存在するはずです。しかし、この仕組みについて分子生物学的な解析はほとんどなされていませんでした。

これまでの井上氏の研究成果は、精子側の融合因子「IZUMO1」を世界に先駆けて発見し (Inoue N et al, Nature 2005) (縁結びの神様が祀られている出雲大社に因んで命名)、種間でよく保存されたN結合型糖鎖がIZUMO1タンパク質を分解から保護していることや (Inoue N et al, Biochem Biophys Res Commun 2008)、IZUMO1と相互作用する精子側の因子ACE3を明らかにしてきました (Inoue N et al, PLoS One 2010)。IZUMO1はもともと精子先体内に存在する分子として同定されましたが、先体反応後には精子細胞膜表面のエカトリアルセグメントに集合して、その部位で膜融合を成立させることを生細胞イメージングにより示しました (Satouh Y*, Inoue N* et al, J Cell Sci 2012 *equal first author)。さらに卵子側での膜融合に関わるとされてきた因子の解析も行ってきました (Inoue N et al, Fertil Steril 2012)。またIZUMO1ノックアウトマウスを用いた解析から、精子の先体反応のメカニズムの定説を覆す新知見を発表しました (Inoue N et al, Proc Natl Acad Sci USA 2011)。

最近、井上氏らの研究グループは融合を阻害するIZUMO1に対する複数のモノクローナル抗体のエピトープ解析から、種間でよく保存され、かつIZUMO1に特異的な配列である、N末端領域の融合コア領域を明らかにしました (Inoue N et al, Development 2013)。この領域はαヘリックス含量が高く、2量体化を引き起こします。さらにIZUMO1を発現することで汎用培養細胞を卵子細胞膜に接着させることに成功しました。

これら一連の研究成果は、不妊治療法の開発、あるいは避妊ワクチンなどの臨床的な応用の可能性もあり、大きな社会的貢献が望まれます。同時に、IZUMO1は既知の融合装置との相同性がないことから、生物の細胞間同士の新たな融合機構として、受精の膜融合の結果をもとにこれまで明らかになっていない、筋細胞や破骨細胞への分化、胎盤形成などの細胞-細胞融合機構の解明にも繋がることが期待されます。

(井上直和)

 

連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部附属生体情報伝達研究所 細胞科学研究部門
電話 024-547-1668 / FAX 024-548-3936
部門ホームページ http://www.fmu.ac.jp/home/cellsci/saibou-top.htm
メールアドレス  (スパムメール防止のため、一部全角表記しています)

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