FUKUSHIMAいのちの最前線
6/608

2 あれから一年、東日本大震災による死者・行方不明者は2万人を超え、震災関連で死亡された人も1千人以上にのぼっています。福島県は原発事故により、1万6千人余りが、いまだに避難を余儀なくされ、そして、5万人以上が県外に転出しています。さらに、避難にともなって特別養護施設の高齢者の死亡が例年の2倍になっており、30キロ圏内の施設入所者の死亡が前年同期の3倍に達しています。自殺者も急増しています。不眠症や高齢者の患者も増加しています。 原発事故避難地域は医療崩壊です。約150人の本学教員枠増による“福島方式”で地域医療の崩壊を回避してきましたが、今、医師の流出が相次ぎ、崩壊の危機に瀕しています。原発事故による惨禍は、真に修羅の場です。 未曾有の大災害に、現場(自衛隊、警察、消防、行政、そして医療従事者など)の働きぶりは“見事”の一言でした。ただ、得られた教訓も多々あります。まず、複合災害に対する体制整備が不備であることが露呈しました。第2に、“放射線”に対する国民・医療人の教育不足が明らかになりました。第3に、指揮命令系統が大混乱をきたしました。リーダーシップを発揮すると波風が立ちますが、それを回避する傾向が、今回は仇になりました。第4に、有事即応の組織に人的余裕のなかったことです。第5に、「安心」と「安全」の峻別ができておらず、混乱をきたしました。「安心」は心とコストの問題です。「安全」は科学の問題です。100%安全が保障されている安心な世界は存在しないという当たり前のことが、認識されていませんでした。 最後に、情報共有化での混乱がありました。震災後一年、福島からのメッセージ

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です