FUKUSHIMAいのちの最前線
483/608

第4章患者救済に奔走した活動記録〈論文・研究発表〉FUKUSHIMA いのちの最前線477これからのフクシマの循環器看護を考える福島の循環器看護にも関わる現状と今後の課題ですが、まず、いまだ避難住民が多数であり、疾患を抱える方は、慣れない避難先でのライフスタイルの変化や通院継続困難による疾病悪化の危険性があります。また、一時避難所が閉鎖となり、県外も含め、様々な場所へ分散してしまっています。さきほどのチームエコが、DVTハイリスクと診断された多数の方たちも継続的調査や支援が必要であるにも関わらず、サポートできていないのも現状です。また、避難区域が解除となり、住民の帰還が始まる地域もありますが、医師や看護師不足など周辺地域の医療体制崩壊の問題もあります。さらに、現在も厳しい環境下で日本各地から集まった多数の作業員が従事しています。中高年男性作業員の中には、基礎疾患を抱えている方もいるとのことです。震災後、増加が心配されていた肺血栓塞栓症については、重症例1件の搬送がありましたが、その後の増加はみられませんでした。これは避難所巡回チームによるエコーを用いた診療とストッキング配布による予防効果を考えました。新潟中越地震後に増加した肺血栓塞栓症ですが、今回はこの教訓が生かされたといえます。病院で実際にあった事例を紹介します。まず、心リハに通う、高齢の慢性心不全の患者さんです。看護師との会話中、塩分より放射線が怖いわとの発言がありました。次に虚血性心疾患と糖尿病で通院中の方です。受診時にHbA1Cの上昇があり、血糖コントロールが不良になっていました。主治医が話を聞くと、震災以来、日課にしていた散歩を止めていたそうです。今回の原発事故は、低線量被曝という世界で初めての経験になります。それゆえ個人差はありますが、私自身を含めて、放射線に対する不安は誰もが持っている現状です。そして、その不安をまったくゼロにすることは難しいと感じています。しかしその不安やストレスこそが疾病リスクになるのではないかと考えます。当院巡回チームの活動を紹介します。チームエコとして、心臓血管外科医、循環器内科医が中心となり、さらに、ヨルダンからの医療チームも加わり、DVT診断チャートでのスクリーニング後、ハイリスク群へのストッキング配布や生活指導が行われました。のべ、2,217名中、リスク所有者は945名にのぼりました。大きなDVTが見つかった11名に対しては、近医へ搬送し入院加療が行われました。基礎調査や運動、水分摂取指導、ストッキング装着指導、パンフレット配布には看護師も関わりました。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です