FUKUSHIMAいのちの最前線
447/608

第4章患者救済に奔走した活動記録〈論文・研究発表〉FUKUSHIMA いのちの最前線441また、避難患者は様々な問題をかかえていました。私たちの支援で解決できる問題とそうでない問題がありました。できるだけ話を聞き、希望に沿うように情報の提供を行いました。最後に、母子支援で重要なことは、いつでもどこでも安全な妊娠、分娩、育児が継続して行われることです。当院からも新生児の手術が必要な妊婦2名を他県へ紹介、搬送しました。また、混乱の中の避難や緊急搬送のため、紹介状のないケースがほとんどでしたので、医師からの必要最小限の情報で受け入れ準備を行い、事故のないようにスタッフ間の情報共有を行いました。避難のためなど、早期退院を希望する患者にはできるだけ希望にそった退院をしていただきました。安全な育児という視点では、入院中から市町村や避難所の関係職者との連携、施設側からは、産後の電話訪問、そして、母子の継続看護として、未熟児訪問連絡票、妊産婦連絡票の避難先と現住所の保健センターへの送付などが重要と思われました。福島県では原発事故を受けて県民健康管理調査が行われています。その中のひとつとして妊産婦健康管理調査も1月から行われています。妊産婦に安心して生活していただくための健康管理と母子支援体制の整備を目的としています。また、県外への長期母子避難者もたくさんおります。福島県の母親が安心して子育てをし、子どもは健康に育たなければなりません。そのために、私たち助産師は、行政や関係機関と情報を共有し、力を合わせて支援体制を構築していかなければならないと考えます。次に災害マニュアルについての課題です。3階西病棟災害マニュアルは2008年に作成しました。2009年には、3階西病棟が火元として避難訓練を行いました。この時はスタッフが新生児を連れて避難することをメインで行いました。今回の震災では、病棟、新生児室、MFICUはマニュアルどおりに行動ができました。今回はたまたま分娩開始の産婦はおりませんでしたが、災害マニュアルの分娩時の記載は、「可能な限りすみやかに分娩させる。分娩第一期の産婦は歩行可能であれば歩行させ、スタッフが分娩セット、バースディメイト、手袋、イソジン消毒持参にて避難。歩行不能の場合、担架使用」と記載されていますが、もし、今回の震災時に分娩中の産婦がいたらこの記載でだれもが適切な行動がとれたかという疑問がでました。そこで3階西病棟災害マニュアルを改訂することになりました。現在分娩を中心に改訂中です。また、今回の震災時に勤務していなかったスタッフからは、どのように行動したのか、夜勤帯だったらどうすればいいのだろうという声もきかれました。今までは、病棟独自の訓練は行ったことがなかったのですが、今回の震災を機に、半年に1回、シミュレーションを行うことにしました。第1回のシミュレーションを行いました。シミュレーションの実際について、目的、実施概要は資料をご覧ください。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です