FUKUSHIMAいのちの最前線
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第4章患者救済に奔走した活動記録〈論文・研究発表〉FUKUSHIMA いのちの最前線419(ALOKA製TGS-136型)を用い飼育室等の放射線量の測定を行った。空調吹出部,排気部および中央作業台上の3ケ所の測定結果は,全飼育室等において吹き出し部が最も高い値を示し,測定日が遅いほど高値を示す傾向が認められた。排気部と作業台上の放射線量はサーベイメータのバックグラウンド値とほぼ同レベルであり,施設周囲の外気の1/4~1/5程度であった。 地震の他に,津波・火災・台風・大雨・洪水・土砂崩れ・地盤沈下・液状化・竜巻・落雷等のいくつかが同時にまたは連続して発生する場合がある。そして,これらの自然災害に伴って,製油所や化学工場,原子力発電所,ダム等の大規模構造物が破壊され,被害が増幅拡大する場合があり,このような状況を複合災害と認識すべきである。複合災害では交通手段が分断され,被災者の救済や救援はじめ,物流やさまざまな活動が阻害される。時間の経過とともに被害が拡大し,二次的三次的災害が起こることも懸念される。東日本太平洋沖地震から原発事故に至るまでの大災害は人類がこれまでに体験したことのない複合災害といえよう。 寺田寅彦は,「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す」と,複合災害ヘの警鐘を数十年前に記述している。 複合災害ではあらゆる面で社会全体に甚大な影響が及ぶことから防災対策もこれまでの概念とは異なる視点で改める必要がある。動物施設においてもライフラインの遮断を想定した必要最小限の飼育維持を行うための具体的な対策事項を整えておくことが重要と思われる。そこで,これまでの防災対策に,①動物用飲用水(限外濾過水)や弱酸性水の汲み置きの徹底,②固形飼料や消耗器材類の在庫管理の徹底,③ケージ落下防止の工夫,④ステンレス蓋がはずれにくく落下しにくいカードケージ使用の徹底(やむをえず小ケージを使用する場合にはクリーンラック内での使用を推奨),⑤作業用ヘルメット,⑥LEDヘッドライト,⑦携帯用ガスコンロとカセットガス,⑧小型発電機,等を追加した。 幸いにも福島医大動物施設の被害は比較的軽微であった。阪神淡路大震災における神戸大学の事例報告を参考として対策を進め,さらに,三陸南地震(2003年5月26日,M7.0)や8・16宮城地震(2005年8月16日,M7.2)を体験していたことから地震への備えがある程度できていたことが功を奏したとも考えられる。今回の震災体験から改めて防災マニュアルの他,災害時には被害を最小限にするための臨機応変の対応が重要であることを痛感した。実験動物技術者の防災意識の共有と実践的連携作業がきわめて重要であると考えている。 最後に,実験動物技術者には減災を図る意味から,施設・設備等ハード面の長所と短所(強みや弱み)を熟知し,その弱みをソフト面から補うような対策や対応を考えておくことを強調しておく。7.防災対策の見直し8.おわりに図1.マウス飼育室(左のグラフ)内の温度・湿度・室圧の推移と外気(右のグラフ)の温度・湿度

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