FUKUSHIMAいのちの最前線
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418震災と原発事故から学ぶ防災対策のズレ及び蒸気配管連結部からの蒸気漏れ,ウサギ用オートスクレーパーのズレ,保管ケージ類の散乱,等であった。附属病院の機能維持優先のため,学部棟や研究棟における給水制限と節電が徹底された。 市水道の断水に伴い,動物施設では19:25に屋上に設置されている給水塔(上水用30t,中水用16t)への注水が停止された。注水停止通告の直後からスタッフ全員で100mL給水瓶(マウス用)1200本,400mL給水瓶(ラット用)430本の他に,7Lポリ容器10個と20Lポリ容器1個に水道水を確保した。ケージ洗浄用として,コンテナ容器(70L)等数個に水道水を汲み置きした。 福島医大の動物施設ではノックアウトマウスが急増した2000年頃から,自動給水装置はラットやウサギの飼育に限定し,マウスでの自動給水装置の使用は取り止め,すべて100mLの給水瓶(週2回交換)を使用することにしていた。これは,マウス飼育での感染防止と水漏れ事故のリスク回避のために変更した措置である。 熱源停止により飼育室の空調が停止され,ケージ洗浄装置や高圧蒸気滅菌装置等も使用不能となった。使用後ケージは薬液噴霧等による消毒の工夫で対応した。マウスやラット飼育室の一部でアンモニア濃度が上昇したため,家電用空気清浄機を設置して運転したり,空調装置の換気装置を運転した。降雪もあり,夜間時には外気温が低下し,飼育室内が10℃にまで低下する時間帯もあった。低体温対策として滅菌済み巣材(綿やキムタオル等)をマウスおよびラット飼育ケージすべてに投入した(写真4)。全室の空調復帰には20日を要した。 図1に示すように飼育室の温度・湿度・室圧が制御不能のため,マウスやラットのSPF水準の破綻が懸念されたが,2ケ月後と3ケ月後に実施した微生物モニタリング検査の結果,所定の項目(マウス18項目,ラット16項目)すべてにおいて問題はみられなかった。SCIDマウス5匹の盲腸内容物の培養検査でもブドウ球菌は検出されなかった。 動物施設の利用者である実験者の多くは,自らの所属の研究室や実験室においても機器類落下による散乱や破損等があり,それらの処理や自宅待機指示が出されたために実験動物研究施設への入室回数が極端に減っていた。そのため,不要動物の処分の協力要請に応じた実験者は数名に過ぎず,飼育作業の負担軽減には繋がらなかった。通常の運営に復帰した4月1日時点でのマウスの処分ケージ数は260ケージ(処分率16.8%)であり,ラットの処分ケージ数は50ケージ(処分率14.7%)であった。 福島原発から57㎞の福島医大においても外気放射線量は事故直後に通常値の9.3倍に上昇した。5ケ月経過時点でも平時の約1.5倍の測定値であった。1月後および2月後の2回,GMサーベイメータ写真3.保管固形飼料の荷崩れ散乱写真2.飼育架台の移動4.断水対策5.空調停止対策6.原発事故への対応写真4.低体温対策としての滅菌済み巣材(綿やキムタオル等)

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