FUKUSHIMAいのちの最前線
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第4章患者救済に奔走した活動記録〈論文・研究発表〉FUKUSHIMA いのちの最前線413 今回の原発事故は周辺地域に放射性物質を拡散し、ヒトを含めた様々な生物を放射線に被曝させる結果を招いた。原発から北西に57㎞離れた福島県立医科大学においても外気放射線量は事故直後に正常値の約50倍、現在も正常値の約3倍に上昇していることが確認されている。このような状況下において実験動物飼育施設内の放射線量の変化を調べることは、飼育管理者や実験者および飼育動物に対する影響を考慮する上で重要である。本研究では4月21日、5月9日、6月17日の3回にわたり実験動物飼育施設内の空調吹き出し部、排気部、中央作業台上の3ヶ所の放射線量を測定した。測定にはGMサーベイメータ(ALOKA製TGS-136型)を用いた。全ての部屋において空調の吹き出し部が最も高い値を示し、測定日が遅いほど高値を示す傾向が認められた。また、排気部と作業台上の放射線量はサーベイメータのバックグラウンド値とほぼ同じレベルであり、測定日による差は観察されなかった。空調の給気フィルターによって飼育室を分類し、放射線量を検討するとプレフィルターのみの飼育室の吹き出し部が最も高い値を示し、続いてHEPAフィルター、中性能フィルターと続いた。測定日の数日前にフィルターの交換を行った部屋の吹き出し部ではバックグラウンド値と変わらない値を示した。フィルターに塵埃に付着した放射性物質がトラップされているために吹き出し部の放射線量が高くなり、フィルター部に放射性物質が蓄積されているものと考えられる。全室において排気部と作業台上の放射線量がバックグラウンド値と変わらないのは、フィルターによって外部からの放射性物質の流入が防がれていることを示している。さらに、フィルターの種類によって放射性物質のトラップされやすさに差があることも示唆された。日本実験動物技術者協会第45回全国総会in盛岡 講演要旨集A-20掲載若井 淳,片平 清昭福島県立医科大学医学部附属実験動物研究施設Radiation level in laboratory animal rooms of Fukushima Medical University after nuclear accident原発事故後における実験動物施設内放射線量の測定

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